ユーザーテスト(行動観察)を活用した潜在的課題の発見事例「東京インターナショナルスクール アフタースクール」 | 住友商事株式会社

ユーザーテスト(行動観察)を活用した潜在的課題の発見事例「東京インターナショナルスクール アフタースクール」 | 住友商事株式会社

本記事ではユーザーテストの事例として、住友商事様の「東京インターナショナルスクール アフタースクール」でのユーザー心理を基にした課題発見事例を紹介させていただきます。英語教育の意識の高い方がユーザーとなる、スクールサイトでの調査結果です。

ユーザーテストの目的

ア フタースクール(※1)の利用検討を目的にWebサイトに訪れたユーザーが、検討に必要な情報を自力で収集できるかどうか調査。また、同校が提供する「英 語で学ぶLTEコース(Learning Through Englishコース)」(※2)がどのように、ユーザーに発見されているかも調査しました。

ユーザー心理を把握し、今後のWebサイト運営やリニューアルに活用できる情報を得ることを目的に実施しました。LTEコースについては、まだ認知が低いコースなので、事前に知らない情報に初めて触れた時にユーザーが理解できるかどうか調査したのが今回の特徴です。

(※1)東京インターナショナルスクールアフタースクールでは、学校終了後に週3日~5日通学する、英語で学ぶ探究型の教育プログラムと夜までのお預かりサービスなどの学童保育サービスを提供している。

(※)Learning Through Englishコースは、「週1回の通学で基礎的な英語力とグローバルスキルの獲得を目指すコース」。文字通り英語を学ぶのではなく「英語で」週1回・60分~3時間学ぶ入門コース。

(本事例の対象サイト)
東京インターナショナルスクール アフタースクール

被検者リクルーティング

ユーザーテスト実施にあたり、どのようなサービスを利用検討する人がターゲットユーザーなのか、実際に東京インターナショナルスクールアフタースクールやLTEコースに通う「生徒」や「保護者」がどのような属性なのか明確にしました。

利用者属性の把握

実際に利用する生徒の「保護者(利用検討者)」に関する情報をヒアリングした結果、以下のような利用者像が明らかになりました。

  • 両親のどちらかあるいは両方がビジネスで英語を使うことが多い
  • 両親のどちらかあるいは両方が留学経験者であることが多い
  • 英語教育やグローバル教育に対する意欲(意識)が高く、一般的な”英会話スクール”より高めの授業料を許容できる

今回のユーザーテストでは場所条件よりも属性条件を重視し、被検者の居住地については候補者に該当者がいれば考慮する程度の扱いにしました。(通学方法を調査したいわけではないため)

また、入学前に英会話教室などの利用経験があるお子さまの申し込みも多いとのことだったため、今回はアフタースクールや英語教育サービスを初めて検討する方に限らず、既に利用経験がある被検者も集めることにしました。

スクリーニング

英語教育やグローバル教育サービスに対して、費用よりも質を優先する考え方を持っている方の心理と行動を知りたかったので、「世帯年収」と「月間の教育予算」を条件の一つとしました。

(一部抜粋)

  • 父親、母親それぞれの英語利用頻度や留学経験
  • 世帯年収、子どもの年齢や学齢や英語経験
  • 子どもの英語教育に掛けられる月間予算
  • 学童保育やアフタースクールの利用経験、検討経験
  • 過去、現在のインターナショナルスクールやプリスクールの利用経験、検討経験
  • これからのインターナショナルスクールやプリスクールの利用検討について

など

※参考:スクリーニング時、インターネットの利用についても確認したところ、FacebookとLinkedinの利用者が多数いました。グローバルに仕事をされている方、感覚を持った方が集まったと推測できます。

テスト設計

ビジネスモデルに基づいてユーザーシナリオを考えます。その上でアクセス解析も実施し、テストに必要な被検者のタスク(指示)を用意します。

ビジネスモデルからユーザーシナリオを考える

情報収集を経てアクションに至るように、下記のユーザーシナリオに沿う形でテストを設計しました。

  1. 自分の子どもを通わせる学校以外の教育機関を検討している
  2. 何かのキッカケ(ママ友の紹介など)で知った「東京インターナショナルスクール アフタースクール」を調べる
  3. アフタースクール以外のコース(LTEコース)に気づいて調べる
  4. ユーザーとして実際にアクションする

アクセス解析の結果をテスト時の観察に活かす

sitemap

アクセス解析では、新規訪問もリピート訪問も流入の大半はTOPページでした。

セグメント別で調べたところ、PCの新規訪問とリピート訪問では2ページ目の遷移傾向に変化がありました。しかしスマートフォンでは新規訪問とリピート訪問での変化があまりありませんでした。


【PC閲覧者の2ページ目遷移傾向(新規とリピートの違い)】

※PC閲覧者の2ページ目遷移傾向(新規とリピートの違い)


【スマートフォン閲覧者の2ページ目遷移傾向(PCとの違い)】

SP閲覧者の2ページ目遷移傾向
※本サイトは2015年8月現在スマートフォン未対応


こういった仮説は、アクセス解析やヒートマップでは正しいか判らないため、ユーザー行動観察を通してその理由を探ります。理由がわかれば、対応を考えることができます。

ユーザーシナリオ1:情報収集・比較検討

「学童保育やアフタースクールの利用や検討状況、調べ方」「英語教育やインターナショナルスクールの利用や検討状況、調べ方」などのインタビューを実施した上で、検索を使って普段通りに『情報収集』や『比較』する行動観察を行いました。

※注:実際のユーザーはインターネット検索だけで情報収集を行うとは限りません。「ママ友と意見交換」「SNSで流れてくる情報をキャッチ」なども情報収集方法としてあり、インターネット検索はどのような時に使うかを把握しておく必要があります。

テスト結果(発見点の一部)

  • まずは自宅の近場の地名で検索を絞り込む(4語・5語まで絞り込むこともある)
  • 子どもを”預ける”ことを意識している場合は「学童保育 英語」などの検索をすることがある
  • 「サービスレベルの高いサービス施設は英語対応しているだろう」と、英語で入力・検索する人がいる

afterschool chiyoda

千代田区周辺で検索した時の「afterschool chiyoda」検索結果。結果的には求めるスクールが見つからなかった。


afterschool tokyoキーワード(地域)によってはこのように英語対応されたスクールのページが引っ掛かる。

ユーザーシナリオ2:何かのキッカケ(ママ友の紹介など)で知った「東京インターナショナルスクール アフタースクール」を調べる

ア クセス解析では「東京インターナショナルスクール」などの流入が多かったため、何らかの経緯でスクールを知った人がサイトを見にくる仮定でテストを行うこ とにしました。検討の際に気にするポイントは、ユーザーによってそれぞれ異なると想定し、ある程度自由さを持たせた上で徐々に条件を加えて行動観察するこ とにしました。

テスト結果(発見点の一部)

  • タイムスケジュールを知りたいのに、階層を潜らないと情報が出て来ない
  • 英語を学ばせたい一方で、英語ができない子どもでも大丈夫か不安を感じながらサイトを見ている
  • 保護者インタビューのページから自分に役立つ情報(検討のヒント)を得ようとする

ユーザーの欲しい情報を見つけやすくする

特徴やカリキュラムを気にする一方で、学校の場所によって授業開始の時間に間に合わない可能性もあるため、タイムスケジュールや授業開始時間を知りたいという心理が存在していました。

しかし、タイムスケジュール(1日のスケジュール)は、第二階層にあるページの下部まで進むないと確認できません。また、「スケジュール」などの言葉が導線上に存在せず、ユーザーが的確に情報を見つけることが難しい構造になっていました。

ユーザーの欲しい情報が早く確実に見つかるように情報設計を見直し、適切なリンクナビゲーションを設けることでユーザーを最短距離で誘導できるようになります。

タイムスケジュール

ユーザーシナリオ3:アフタースクールのカリキュラム以外(LTEコース)に気づいて調べる

アフタースクールは、学校が終わった後、週3日~5日通学し授業を受ける、いわゆる「ダブルスクール」のようなサービスですが、LTEコースは週1回の通学のみの入門コースになっています。

最 初にWebサイトを訪れる時点でのユーザーニーズ(アフタースクールの検討)と、LTEコース(週1回のみ習い事のような通学の検討)では目的も探し方も 異なります。今回は、アフタースクールの情報を調べている時に、LTEコースの情報を目にしたユーザーがどのような心理で行動するかを観察しました。

テスト結果(発見点の一部)

  • カリキュラムページだけではなく、FAQページも見て各コースの違いを知ろうとした
  • 一般的な英会話教室などと異なり、英語を学ぶではなく「英語で学ぶ」ことに好感を抱いた(一方で英語ができなくても大丈夫なのか不安も抱いた)
  • カリキュラムに興味を持ったが、入学資格(条件)がわからず自分の子どもでも大丈夫か不安を抱いている

不安を感じるユーザーのための導線強化

理解していくうちに「英語で学ぶ」カリキュラムや特徴に興味を抱く被検者が多かった一方で、まだ英語ができない自分の子どもでも大丈夫なのか不安になってしまうケースがありました。

実はグローバルナビの「ご質問・FAQ」ページの中程に「Q.子どもも親も英語がまったく話せませんが大丈夫でしょうか?」の答えが掲載されているのですが、ユーザーはその情報にたどり着くことができませんでした。

入学時の英語のレベルが不安な方向けに、カリキュラムページや各校のページから、FAQページの該当するQへ遷移できるリンク導線を設けることで、ユーザーの不安を払拭できるようになります。

また「ご質問・FAQ」ページ内の配列を見直したりカテゴリを設けることで、このページを見に来たユーザーに欲しい回答が存在することを早い段階で伝えることができます。

Q.子どもも親も英語がまったく話せませんが大丈夫でしょうか?
Q.子どもも親も英語がまったく話せませんが大丈夫でしょうか?

ご質問・FAQ

ユーザーシナリオ4:ユーザーとして実際にアクションする

アクション(コンバージョンポイント)は「お問い合わせ・資料請求」「説明会申込み」「個別面談」「サマースクール」など各校ごと、さらに複数存在するため、最低限の条件だけ設け、着地点は被検者に任せることにしました。

実際に通えることを前提としたモデル校に何らかのアクションを起こしてもらい、その時の行動やフォーム利用時の行動観察を行いました。

テスト結果(発見点の一部)

  • 「入学案内」ページ上部が時期の関係でサマースクール案内になっており、目的の情報が無いと判断されて離脱してしまった(実際はページ下部に各校の入学案内が存在する)
  • ヘッダーの「お問い合わせ・資料請求」からアクションしようとした場合、各校が実施している個別面談や説明会の存在に気づけなかった

入学案内ページの離脱要因を解消

調査時期がサマースクールの受付期間中だったため、入学案内の上部がサマースクールの案内になっていました。

そのため実際にはサマースクール案内の下部に各校の個別面談や説明会の案内が存在しているにも関わらず、被検者は「このページはサマースクールの案内ページ」と思い込み離脱してしまいました。

ページリンクやバナーの活用が一案として検討できますが、ページの下部に目的の情報があることをファーストビューで示せれば、ユーザーの離脱を防ぐことが可能と考えられます。
入学案内


「お問い合わせ・資料請求」フォームからの導線強化

ヘッダーの「お問い合わせ・資料請求」からフローを進めた場合、各校が実施している個別面談や説明会の存在に気づくことができませんでした。

「お問い合わせ・資料請求」フォームには各校の電話番号や営業時間の記載があるので、「個別面談」や「説明会」案内へのリンク導線を一緒に設けることで、気づいていなかったユーザーを誘導することができます。

お問い合わせ・資料請求

担当者の方よりコメント

今回、調査いただき、どのようにサイトを訪れたユーザーが情報を求め、行動するのか、がわかりました。

特に、意外と細かいところまで見られていることや、逆に知ってほしい情報が見落とされたりすることがあることに驚きました。

サイトの大幅な改修を実施することは、すぐには難しいですが、それまでの対応として関連する項目にリンクを貼って見せたいページへ誘導することや、分かりやすい言葉を使用する、各校のページで言い方などがそろっていない部分をそろえるなどの対応をしたいと思います。

まとめ

今回の調査では、検索を使った情報収集では英語で検索する人がいるなど、グローバル感度の高い方が集まったユーザーテストならではの発見が得られました。

一般的なWebサイトで英語対応を検討するケースはまだ少ないですが、ターゲットが日本人であってもビジネスモデルによっては英語対応することで、ポジティブな結果を得られることがありそうです。

Webサイト全体ではユーザーに必要なコンテンツが揃っていると評価できましたが、ユーザーの態度変容に合わせてスムーズに情報が見つかるようにはなっていませんでした。

「何を見ている時に、何が気になってくるのか」という心理の変化に配慮したナビゲーション設計を行うことで、よりユーザーにとって使い勝手の良いサイトに改善できます。

ユーザーテストは既出の課題を検証するだけでなく、ユーザー心理に基づく潜在的な課題を発見できる手法です。ぜひリニューアルを検討される前の定性調査としてご活用ください。

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著者紹介

大谷 昌史(おおたに まさふみ)
大谷 昌史(おおたに まさふみ) 事業部長

2008年2期目のナイルにコンサルタントとして入社。会社の成長に合わせながらポジションを変え、営業統括や人事役員、副事業部長などを経て現在に至る。現在はクライアント成果のためにコンサルティング品質を高めながら、アライアンスやソリューション設計による事業領域の拡張を推進している。

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