いいアイディアを生むブレストの5つのルール【最強コンテンツの作り方 第3回】

いいアイディアを生むブレストの5つのルール【最強コンテンツの作り方 第3回】

もはや、ネットで集めた二次コンテンツを大量生産する時代ではありません。情報洪水の時代だからこそ差別化を図り、ユーザーに信頼される価値の高いオリジナルコンテンツが求められているのです。

本連載「最強コンテンツの作り方」では、情報収集からインタビュー、取材、企画、文章の作成方法まで、ユーザーの心をつかむコンテンツの作り方をお届けします。 第3回は、ブレストについてご紹介します。

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5つのルール:「肯定」「飛躍」「連想」「匿名」「描写」

ただ漠然と「いいアイディアはないかな〜」とぼやいていても何も生まれません。ブレスト(ブレーンストーミング)でいい企画を生むためには、「肯定」「飛躍」「連想」「匿名」「描写」の5つのルールを守ることが重要です。

この5つのルールを守れば、「自分には企画力や想像力がないから、おもしろい企画を考えるなんて無理だ」とあきらめることもありません。

これから、この5つのルールについて詳しく説明していきます。

1 肯定

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ブレストとは、アイディアの拡散です。とにかく制限なく、自由に数多く発言することが最優先です。
ブレストでおもしろいアイディアを出したり、企画を考えたりすることが苦手だという人も多いと思います。しかし、ブレストでは必ずしも自分がおもしろいアイディアを出す必要はありません。どんなにくだらないことでも、発言することに意義があるのです。

ブレストで最悪なのは「したり顔コメンテーター」です。
「それ実現性あるの?」「予算的に無理でしょ」「それ、おもしろくなると思えないなぁ」と、したり顔でなんでもケチをつける人です。一見、現実を見据えた鋭い人に思われがちですが、実はそういうしたり顔コメンテーターは、生産性ゼロの無意味な存在なのです。

ブレストでは、くだらない意見を絶対に否定していけません。花見の話をしているときに、誰かが唐突に鼻血やイボ痔の話をしても、否定してはいけないのです。みんなで「何で?何で?」「おお、なるほど!」「すげーな!その手があったか!」と驚いたり、笑ったりしてあげましょう。
的外れでも、発言した人にとっては何か意図があるはずです。すぐに否定することは、あなた自身の想像力の欠如を露呈するようなものです。
参加者は、その関係なさそうなくだらない発言からインスピレーションを得て、また違うアイディアを思い浮かべるのです。

ブレストや企画会議は、みんなのアイディアが化学反応を起こして、何が生まれるかわからないからおもしろいのです。「自分が飛びきりすごいアイディアを出さなきゃ!」と、気構える必要はありません。

2 飛躍

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飛躍とは、拡散思考ともいわれます。質より量を優先するのが目的なので、できるだけ飛躍したアイディアを出し合います。

例えば、社内のプロジェクトチームのメンバーでブレストをします。そのときに、ブレストを何度重ねても、なかなかいいアイディアが出てきません。

そんなときは、できるだけプロジェクトに関係のない人を加えてみましょう。同じ職種や、同じ業務に携わる人だけを集めると、いわゆる「プロの正攻法」に頼った想定内のアイディアになりがちです。結局は、いつも発言力のある人のアイディアでまとまることになります。
いつも同じ部署でブレストをやっているのであれば、他部署の人を巻き込みましょう。普段、企画とは関係ない管理部や営業部など、面識のない社員も含め、全社的にやることをおすすめします。

最初は、とにかく議題とまったく関係なさそうなバカバカしいアイディアを出すことです。とんでもなく、絶対実現できない荒唐無稽なアイディアでいいのです。これによって、予定調和的な正論から抜け出すことができるのです。

もちろん、飛躍したアイディアは、すぐにコンテンツとして具現化することは難しいかもしれません。また、どんなにおもしろい企画でも、社内からの反対が出るかもしれません。とはいえ、ここで飛躍したアイディアを否定してはいけません。なぜなら飛躍は、最終的にたどり着くコンテンツを生むための触媒だからです。くすぶっている火に注ぐ油なのです。

飛躍することが目的なので、司会をする人は、最初からお題をかっちり限定しないように気を付けましょう。また、お題が行き詰まったら、いったん外してみるのもおすすめです。「花見に新たに加えるべき訴求ポイントは何か?」というようにお題を限定してしまうと、アイディアの飛躍がなくなってしまいます。

ブレストで陥りがちな落とし穴が、「参加者全員のアイディアを集める→議事録にまとめる→参加者の合意を得る→担当者が企画に落とし込む」という進め方です。これだと、最大公約数をまとめた平凡なアイディアの寄せ集めにしかなりません。

飛躍の目的は、自分以外の視点や切り口から刺激を受けることで、イメージを膨らませることにあります。そして、思いもよらない発想が個人の中で生まれ、さらにその発想から、別の切り口の新しいアイディアが生まれるという、サイクルを作るためなのです。

飛躍は、集団の中で生まれるさまざまな視点や切り口を刺激にして、個人の創造性を育むための手法です。これを反対に「個人のいいアイディアを集約する」と考えてしまうと、意味がなくなってしまいます。最強コンテンツを生み出すためにも、飛躍をしてみてください。

3 連想

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ブレストにおける連想ゲームでは、回答は用意されていません。1つのキーワードから次々と思いつく言葉を出していきます。あるいは、連想ゲームをしりとりにすることで、連想できるキーワードの幅を広げることもできます。
商品と連想ゲームで出てきたキーワードをつなげてコンテンツ案にしてみます。

マンダラチャートで連想する

マンダラチャートとは、3×3の9マスの枠で構成される目標達成のためのフレームワークで、連想ゲームに使うととても便利です。

例えば、お酒に関するコンテンツの企画を考えているとします。まずはお酒に関する情報を集め、調査をするでしょう。コンテンツ企画は、ここからどんな情報を集めて、組み合わせるかが勝負のカギを握ります。

ここで、情報の集め方と組み合わせについて、一例を紹介しましょう。

インターネットテレビ局であるAbemaTVに、「株式会社ニシノコンサル」という番組があります。ビジネスで行き詰まったクライアントが、キングコングの西野亮廣氏に相談するという企画の番組です。ブレーンには、SHOWROOM株式会社の前田裕二社長や株式会社幻冬舎の箕輪厚介氏などが参加しています。

ある回で、黒糖焼酎を売る杜氏から、「知名度を上げて売上を3倍にしたい」という相談がありました。

西野氏や前田氏が、杜氏にいろいろヒアリングをしながら、アイディアを出していきます。そこで出てきたキーワードが、「さとうきび」「ラベル」「税務署」「奄美大島」「見学ツアー」「レモンサワー」「スナック」「おっさん」などでした。

こういったキーワードをまた深掘りして、さらに詳しく調べていきます。

このキーワードを探す上で便利なのがマンダラチャートです。番組では、マンダラチャートを使っていたわけではありません。しかし、企画を考えるとき、マンダラチャートはアイディアを可視化する上で非常に役に立ちます。

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例えば、まず真ん中に「黒糖焼酎」を入れます。そして、その周辺に思い付く関連キーワードを埋めていきます。この場合は、「さとうきび」「ラベル」「税務署」「奄美大島」「見学ツアー」「レモンサワー」「スナック」「おっさん」などと。
そして、抽出した8つのキーワードから、さらに派生する8つのキーワードを出していきます。そうすることで、売りたい商品の訴求ポイントが可視化され、最低でも9×9=81個のキーワードが出てきます。もちろん、すべてのキーワードを均等に広げていく必要はありません。アイディアが広がりそうなキーワードを深掘りしたり、組み合わせたりして、新たなアイディアを考えるヒントにします。

ここでは、「レモンサワー」を例に挙げます。「レモンサワー」から、「女性」「安価」「まんこい」「ゴールデン街」「ブランド」「試飲会」「会員制」といった派生するキーワードが出てきます。

焼酎は「おっさん」のイメージがあるので、「女性」はあまり好んで飲まない。しかし、「レモンサワー」なら女性も抵抗がない。焼酎なので基本的に「安価」。しかも、味の差はさほどないので、「ブランド」勝負になる。そこで「試飲会」「会員制」などにして消費者に特権を与える。黒糖焼酎の中でも「まんこい」というブランドは、「レモン」との相性がすごくいい。新宿のゴールデン街にある西野氏の行き付けの「レモンサワー」専門店が、実は「まんこい」で作られていたことを知る。

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番組では黒糖焼酎を使って、「日本一のレモンサワーを売ろう!」という結論になりました。
こうして出てきた関連ワードを深掘りして調べていくうちに、そのキーワードの組み合わせで新しいアイディアが出てくるのです。


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ちなみに番組で出たアイディアを実践したところ、売上は数ヵ月で希望どおり3倍になったそうです。

4 匿名

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日本の会議は、とかく「誰が言ったか」を気にします。「あいつの言うことはムカつく」「あいつはおもしろい意見を言わない」「批判されたくない」「一人で勝手に盛り上がっている」などなど。しかし、ブレストは誰の発言なのかは一切関係ありません。部長と新人に主従関係やヒエラルキーがあってはいいアイディアは出ません。

そこで、アイディアを自由に出すために公平性・平等性を保つための方法には、下記の2つがあります。

時間制限を設ける

限りなく短い時間制限を設けて、全員が意見を言う機会を作ること。長時間だらだら話し合っていても、なかなかいいアイディアは出ません。

例えば、60分のブレストをします。この場合、1テーマ20分×3本に区切ります。そして、5人が参加していたら、1人30秒ずつの持ち時間を渡します。これが、全員で回す巡回ブレストです。20分で1人が話す時間は4分(30秒×8回)。発言はすべてメモします。

20分で5人×8回=40本分のアイディアが出たら、誰が言った意見かはほとんどわからなくなりますし、自分がアイディアを出すのに必死で、いちいち誰が何を言ったか気にしていられません。部長も新人も平等です。

ホワイトボードを使う

ホワイトボードを使うことも有効です。ブレストに参加する人がお互い顔を向かい合わせていると、そこに人間関係が成立してしまいます。ですから、全員がホワイトボードというひとつの方向を向くのです。そうすることで、全員がホワイトボードに書かれた内容だけに集中することができます。そして、時間制限と同様に、「誰が言ったか」ではなく、「何を言ったか」が可視化されることで、アイディアを俯瞰することができます。

ホワイトボードを使うと、誰かが一方的にしゃべっているように見えて、全員がホワイトボードに向かって意見を言い合うことができます。そうすることで、「誰が言った」ではなく、「何を言った」がクローズアップされるようになります。ある意見に対して、みんなが意見を言うという形になることで、議論がより自由になるのです。

時間制限を設けた巡回ブレストでは付箋などでメモをとっていきますが、巡回ブレストとホワイトボードを織り交ぜるのもいいでしょう。

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5 描写

People in a Meeting and Social Network Concept

なぜ、絵を描くことがアイディアにつながるのでしょうか?
例えば、プレゼンをしたとします。1,000字を詰め込んだ文字だらけのスライドを10枚見せた場合と、インパクトのある画像に20文字を組み合わせたスライド10枚を見せた場合では、どちらを記憶にとどめているでしょうか。
絵は、文字よりも情報量が圧倒的に多く、人間は情報の90%近くを視覚から得るとされています。それにもかかわらず、人の記憶に残りやすいのです。絵は、文字や話す言葉以上の豊富な情報を、具体的な形にします。

また、ビジュアルの情報は、会議やブレストでもホワイトボードなどで共有することで、参加者にインスピレーションを与えることができます。そうすると議論が盛り上がりやすく、アイディアも活性化します。「ブレストが盛り上がらないなぁ」と感じたら、とりあえず絵にしてみましょう。下手な絵でもいいので、ホワイトボードにみんなで共有してみることをおすすめします。

優秀なコンテンツ制作者は、会議やブレストで率先してホワイトボードの前に立ち、絵や図表を描くのを好みます。そのほうが参加者は理解しやすく、納得してくれると知っているからです。絵を描くことは、すなわちファシリテーター、クリエイター、交渉人の一人三役を兼ねることになるので、その存在感も一際大きくなります。

絵を描くという行為は、人類が文字を発明する以前からあったコミュニケーション手法です。コンテンツを制作し、伝えることを生業とする人にとって、もっと重要視すべきことかもしれません。

ノートに手書きをする意味

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昨年末、SHOWROOM株式会社の前田裕二社長が、「メモの魔力」(幻冬舎)という本を出版しました。前田氏は映画や演劇を観ているときも、歩いているときも、人と話をしているときも、何か気になったことがあればいつもメモをとるそうです。メモは単なる情報収集ではなく、同時に思考実験をするのでアイディアを生み出す習慣がつくとのことです。「なぜそれはおもしろいのか」「なぜ気になったのか」を、常に考えるからです。

先程ご紹介した番組「株式会社ニシノコンサル」でも、スケッチブックを取り入れて以来、アイディアを可視化することで、ブレストはさらに盛り上がるようになっています。

ブレストや企画会議で傍観者になっている人は、決して能力やスキルが低いからではありません。漠然と「いいアイディアないかなぁ」と考えているだけだからです。

 

今回ご紹介した「肯定」「飛躍」「連想」「匿名」「描写」の5つのルールを守れば、きっとブレストは楽しいものになり、素敵な企画やアイディアが次々と生まれてくることでしょう。

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編集者情報

金子 光
金子 光(かねこ ひかる)
新卒で楽天グループ株式会社に入社。
営業管理として40人規模のチームをマネジメント。その後社員3人のベンチャー企業に入社し新規事業立ち上げを経験。
現在はナイルのマーケティング相談室編集長として、Webマーケティングに従事している。
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監修者情報

ナイル編集部
ナイル編集部

2007年に創業し、約15年間で累計2,000社以上の会社にマーケティング支援を行う。また、会社としても様々な本を出版しており、業界へのノウハウ浸透に貢献している。(実績・事例はこちら

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