経営ハッカー(freee) vs スモビバ!(弥生)【オウンドメディア一本勝負!第6回】

経営ハッカー(freee) vs スモビバ!(弥生)【オウンドメディア一本勝負!第6回】

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成功するオウンドメディアと失敗するオウンドメディアの違いは何なのでしょうか。私たちは、何を基準にオウンドメディアを運営していけば良いのでしょうか。
「オウンドメディア一本勝負!」では、業界の気になるオウンドメディアを5つの指標で比較・検証し、その答えを探っていきます。

第6回は、「経営ハッカー」(freee株式会社)と、「スモビバ!」(弥生株式会社)。

「経営ハッカー」は、「クラウド会計ソフト 会計freee」などを提供しているfreeeが2013年に始めたオウンドメディアです。
「スモビバ!」は、「弥生会計」や「やよいの青色申告」などの業務ソフトウェアを提供する弥生によって運営されている、個人事業主や中小企業、起業家向けのオウンドメディアです。スモールビジネスに関する業務や経営にまつわる疑問・課題を解決するための情報を提供しています。

「オウンドメディア一本勝負!」では、次に挙げる5つの指標において、それぞれのメディアを採点していきます。

<5つの指標>
【1】ブランディング
企業に対する共感や信頼を通じて価値を高められているか。
【2】おや?まあ!へぇ~
疑問や好奇心を抱かせ、驚きや発見を与え、納得してもらえているか。
【3】ソートリーダーシップ
未来を見据えた革新的な提案によって、業界を主導できているか。
【4】解決策の提示
ユーザーが抱える課題や悩み、欲求を満たす提案ができているか。
【5】ストーリー性
心を動かし、記憶に残し、態度変容を促すストーリーが提供できているか。

【1】ブランディング

ブランドとは、いったい何でしょうか?「ブランディングの父」と呼ばれるデービッド・アーカー氏は、ブランドを「マーケティング的観点」と「マネジメント的観点」という、2つの観点から説明しています。

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・マーケティング的観点
マーケティング的観点とは、ブランドが表すものが、機能面、情緒面、自己表現、人間関係において役立つということ。顧客がそのブランドにふれることで、信頼関係が深まっていくと説明しています。

・マネジメント的観点
マネジメント的観点について、アーカー氏は「組織の価値観を支えるには、しっかりした企業文化と報酬体系だけではまだ不十分である。(中略)その価値観を血の通ったものにする方法に沿った企業文化と活動も必要である」と主張しています。
それは、これまでのように、ただ商品とサービスを売るための宣伝・マーケティングだけでは通用しない。企業活動も含めた包括的・統合的マーケティングにシフトしていかなければならないと解釈できます。オウンドメディアはマネジメント的観点から、その使命を負っているともいえます。

今回はこの2つの観点から、両メディアのブランド力を見てみます。

まずマーケティング的観点です。「機能面」→「情緒面」→「自己表現の実現」に向けてどのようなコンテンツを提供しているのでしょうか。

「経営ハッカー」を運営するfreeeは、スモールビジネスの誕生(会社設立)から日常業務のサポート(経理業務と会計ソフト)、そして成長の支援(給与計算や従業員管理の人事労務)をワンストップで支援する企業です。「経営ハッカー」は、会計士や税理士といった社内外の専門家が執筆し、情報を発信しています。

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「スモビバ!」も同様に、専門家が監修した実用的な記事によって、ユーザーの満足度を高め、信頼性を担保しています。また、さまざまなツールや情報で業務の効率化を意識づけ、自社製品へのコンバージョンにつなげています。「確定申告」や「会計・経理」「給与・マイナンバー」など、業務や経営に関する極めて実用的な記事やインタビューが提供されているのが特長です。

ともに提供するコンテンツは、「経営や実務のノウハウ(機能面)」→「起業へのモチベーション向上(情緒面)」→「起業&成功(自己表現の実現)」のステップを踏む流れで制作されています。

マネジメント的観点では、前述の起業&成功に至る流れの中にあって、自社の提供するソフトウェアやサービスがいかに役立つかといった訴求だけでなく、オウンドメディアで展開されるストーリーを通じて企業が訴求したい価値観をユーザーの記憶にとどめることで、今は必要なくても、いつか起業・独立するにあたって思い出してもらうような導線がしっかり設計されています。

◆ブランディングの採点◆
5(経営ハッカー):5(スモビバ!)

両社とも互角の勝負です。どちらのメディアもアーカー氏の言う「マーケティング的観点」と「マネジメント的観点」において、しっかりブランディング設計ができています。

【2】おや?まあ!へぇ~

「経営ハッカー」と「スモビバ!」ともに、専門家が監修した実用的なコンテンツによってユーザーの満足度を高め、信頼を獲得している点では相違ありません。

しかし、両メディアにはそれぞれターゲット層に若干の違いがあります。「経営ハッカー」が起業や会社経営にあたっての考え方、理念を軸にした中級・上級者を対象としているのに対し、「スモビバ!」は、初級・中級者に向けて、最低限知っておくと役立つ実践的な情報を軸にしています。
「経営ハッカー」には、起業家が知っておくべき心得や経営哲学が、「スモビバ!」には、起業家になるための実践的なノウハウがつまっているといえます。

どちらかのコンテンツが良いということではありません。起業・経営の全体像が俯瞰できる「経営ハッカー」と、いざ起業・経営を始めたときに、知っておくと役立つノウハウが満載の「スモビバ!」。起業・経営を考えている人は、この両メディアの「マクロ視点&ミクロ視点」「長期的視点&短期的解決策」「概念&実践」を押さえておけば、安心感を覚えることができるでしょう。

起業・経営を考えている人にとっては、どちらも役立つ実践的な情報ですが、「おや?まあ!へぇ~」という視点は、やや希薄だといえます。

◆おや?まあ!へぇ~の採点◆
4(経営ハッカー):3(スモビバ!)

「経営ハッカー」のほうが、「知っているようで知らない話」「意外な盲点」などの切り口が多く、ユーザーに新たな視点や気づきを与えている点で少しリード。「スモビバ!」は「おや?まあ!へぇ~」の切り口で紹介するコンテンツは少ないといえます。

【3】ソートリーダーシップ

特定の分野やビジネスの世界などで、哲学や考え方を表明し、リーダーシップをとっていく人や企業のことをソートリーダーといいます。そして、未来を先取りしたテーマやその解決策を提示し、ユーザーに気づきを与え、議論を引き起こすような姿勢や活動をソートリーダーシップといいます。

アップデートを重ね、日々進化する近年のGoogleは、単に検索キーワードが多く含まれているだけの内容の薄いコンテンツを評価しません。ソートリーダーとして価値の高いコンテンツを発信し続け、ユーザーに豊富な経験と知識が認められれば、信頼性が高まりGoogleの評価も上がってきます。

「経営ハッカー」は、創業者である佐々木大輔CEOの個人ブログがきっかけで誕生しました。会社を設立するにあたって、インターネットで会計や税法などの情報を調べても、いい情報が見つからなかったため、自分で情報を発信すれば、ほかの人の役にも立つと考えて始めたそうです。

そんな佐々木CEOの思想のもと、「経営ハッカー」は社員参加型のメディアとして情報を発信しています。また、freeeの社員には、実家が自営業の人が多く、潜在的に当事者意識を持っているそうです。

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ちなみに、軌道にのるまで、「経営ハッカー」のコンテンツ制作はクラウドソーシングでライターを集めて量産するスタイルでした。しかし、今は「顔が見える人」が記事を書くように、大きく方針転換しているとのこと。

一方、「スモビバ!」はコンテンツ面において、特に企業理念を強く打ち出しているわけではありませんが、運営する弥生は、単なるパッケージ提供ベンダーではなく、スモールビジネスの事業のあらゆるニーズをサポートする「事業コンシェルジュ」企業への変革を、戦略的な目標として掲げています。そういう意味で「コンシェルジュ」的なコンテンツが充実しているという見方もできます。

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◆ソートリーダーシップの採点◆
4(経営ハッカー):3(スモビバ!)

両社が扱う商品・サービスのターゲットは法人・個人をともに対象にしていますが、起業・独立を基点としたスモールビジネスが中心なので、アプローチが比較的個人に寄っています。ただ、「スモビバ!」が実務ノウハウを軸にしているのに対し、「経営ハッカー」はより企業理念や経営哲学を軸にしたコンテンツになっている分、ソートリーダーシップの観点では「経営ハッカー」の勝ちとします。

【4】解決策の提示

会計ソフトを通じて「起業・経営」をサポートするサービスゆえに、両社ともに「解決策の提示」がとても充実しています。ともに「起業・経営」をするにあたって、立ちはだかるさまざまな課題や悩みを解決する情報が豊富にそろっています。

「経営ハッカー」のカテゴリーは、法人枠が「会社設立」「経営・戦略」「経理・財務」「人事・労務」「上場準備」「働き方改革」の6つ、個人枠が「開業」「確定申告」「経理の基礎知識」「フリーランスの働き方」の4つです。

「経営ハッカー」は、「起業・経営」を考えるユーザーをターゲットにしてはいるものの、経営者だけでなく、営業・人事・総務・経理など、会社員にも役立つ情報が充実しています。読んですぐに役立つ情報もありますが、どちらかといえば教養的要素が濃いコンテンツが多い印象です。

freeeが大事にしている価値観のひとつに、「マジ価値」というものがあります。「それって、マジで価値ある?」の合言葉から生まれたそうです。「経営ハッカー」にとっての「マジ価値」は、アクセス数を稼ぐことよりも、ユーザーにとって本当に価値があるものかどうかを図る指標となっており、クオリティの担保をしています。

「スモビバ!」のカテゴリーは、「確定申告」「会計・経理」「給与・マイナンバー」「起業・会社成立」「基礎知識」「まとめ」「お役立ちツール」の7つです。

「スモビバ!」は、特に確定申告の情報が充実しており、最近ニーズの高いYouTuberの経費、確定申告の注意点など、時流に合わせたコンテンツもしっかり押さえています。ほかにも「白色申告から青色申告へのハードルはなかった? みんなの確定申告の実態調査!」といった、アンケートをもとにグラフを使って確定申告の実態を紹介するコンテンツや、スモールビジネス初心者にもわかりやすい情報が掲載されています。

個人事業主のかんたん税金計算シミュレーション」といったシミュレーションツールの提供や、各種書類の書き方、業務の効率化を解説しつつ、同社の製品やサービスへのコンバージョンにもつなげています。 「経営ハッカー」と比べると、かなり実践的な情報が多いといっていいでしょう。

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◆解決策の提示の採点◆
5(経営ハッカー):5(スモビバ!)

起業・独立の際に両メディアを購読していれば「鬼に金棒」という意味で互角としました。商品・サービスの性質上、「解決策の提示」がしやすい分野ですので、今後もさらにコンテンツの充実が期待できます。

【5】ストーリー性

BtoBのオウンドメディアのコンテンツは、ビジネスに役立つかどうかが最重要課題なので、ユーザーの心を揺さぶるようなエモーショナルなコンテンツは必要ないと考える方もいるかもしれません。しかし、問題提起から問題解決に至るプロセスにおいて、人は何も起こらない事実や無機質な情報はすぐ忘れてしまいますし、すぐ退屈します。だからこそ、コンテンツにストーリーは欠かせません。

そして、心を動かされるストーリーには、「変化」「コントラスト」「キャラクター」が必要不可欠です。

例えば、野球は「8対7のゲームが一番おもしろい」といわれます。10対1の快勝より、シーソーゲームの果ての9回裏の逆転サヨナラ満塁ホームランのほうが心は動かされるでしょう。サッカーならロスタイムでの勝ち越しゴール。あるいは昨年のラグビーワールドカップのような大番狂わせ。スポーツ観戦において、土壇場の大逆転が感動を生むことは、誰もが体験で知るところです。そして、ゴルフの渋野日向子選手や、ラグビーのリーチマイケル選手を例に挙げるまでもなく、感動ドラマにはいつもヒーローが生まれ、私たちは彼らの生き様に共感し、感動を覚えます。

だから、人に何かを伝えるときには、ストーリーが欠かせないのです。ストーリーは心を動かすスイッチであり、伝えたい情報を心に刻む記憶装置なのです。

◆ストーリー性の採点◆
3(経営ハッカー):3(スモビバ!)

「経営ハッカー」「スモビバ!」ともに、ストーリー性という点では、起業家たちへのインタビュー記事があります。ただ、どちらも本数は多くはありません。起業のモチベーションを喚起するためにも、起業家たちの生き様が生々しく伝わるインタビュー記事が、もっとあってもいいかと思います。

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総合結果

最後に、それぞれの項目の結果を合計してみましょう。

◆合計◆
21(経営ハッカー):19(スモビバ!)

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「経営ハッカー」に軍配が上がりました。「経営ハッカー」はタイトルが示すとおり、企業経営全般を網羅したコンテンツのラインナップのため、直接起業や独立を考えていない潜在層のビジネスパーソン全般にも役立つメディアとなっています。「経営・戦略」「働き方改革」がカテゴリーとして独立していることも、その表れです。対して「スモビバ!」は「確定申告」関連コンテンツの充実ぶりを見てもわかるように、起業や独立が現実的になった顕在層がターゲットのようです。

コンテンツの拡張性という意味では、今後「経営ハッカー」は実務ノウハウ、「スモビバ!」は経営哲学と、お互いに弱いコンテンツを充実していく余地はまだまだありそうです。

著者紹介

成田 幸久(なりた ゆきひさ)
成田 幸久(なりた ゆきひさ) コンテンツディレクター(コンテンツマーケティング戦略支援・制作支援)

AMEX会員誌「IMPRESSION」や「ワイアード」日本版、JAL機内誌「winds」などで副編集長を務めた後、眞鍋かをりなどの著名人ブログをプロデュース。ほか、「ギズモード・ジャパン」創刊ディレクター、セブン–イレブンとヤフーの共同事業メディア「月刊4B」編集長、オウンドメディアのアドバイザリー支援など、ウェブメディアの企画・運用など実績多数。著書に『愛されるWebコンテンツの作り方 』がある。

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