ネスレアミューズ(ネスレ日本) vs &KAGOME(カゴメ)【オウンドメディア一本勝負!第5回】

ネスレアミューズ(ネスレ日本) vs &KAGOME(カゴメ)【オウンドメディア一本勝負!第5回】

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成功するオウンドメディアと失敗するオウンドメディアの違いは何なのでしょうか。私たちは、何を基準にオウンドメディアを運営していけば良いのでしょうか。
「オウンドメディア一本勝負!」では、業界の気になるオウンドメディアを5つの指標で比較・検証し、その答えを探っていきます。

第5回は、「ネスレアミューズ」(ネスレ日本株式会社)と、「&KAGOME」(カゴメ株式会社)。

ネスレ日本は、スイスに本社を置く世界最大の食品飲料会社・ネスレの日本法人。カゴメは愛知県名古屋市に本社がある、トマトの加工品を主軸にした食品会社です。その規模や歴史は大きく異なりますが、両社に共通するのはユーザーとの密なコミュニケーションを重視し、オウンドメディアをコミュニティと位置づけている点です。

「ネスレアミューズ」は、2010年にスタート。ユーザーとのコミュニケーションとECを両立させたオウンドメディアとして運営されています。会員登録をすれば、サイト内で使えるコインやショッピングポイントを貯めたり使ったりできるなど、まさにアミューズメント仕様です。

「&KAGOME」は、2015年にオープン。担当者とユーザー、またはユーザー同士でコミュニケーションをとったり、情報交換をしたりする場として活用されています。ユーザーとの密なコミュニケーションを重視したアットホームな作りが特徴です。

<5つの指標>

【1】ブランディング
企業に対する共感や信頼を通じて価値を高められているか。

【2】おや?まあ!へぇ~
疑問や好奇心を抱かせ、驚きや発見を与え、納得してもらえているか。

【3】ソートリーダーシップ
未来を見据えた革新的な提案によって、業界を主導できているか。

【4】解決策の提示
ユーザーが抱える課題や悩み、欲求を満たす提案ができているか。

【5】ストーリー性
心を動かし、記憶に残し、態度変容を促すストーリーが提供できているか。

【1】ブランディング

「ネスレアミューズ」が立ち上がった2010年は、まだコンテンツマーケティングやオウンドメディアという言葉が普及する前のことです。そういう意味では、デジタルブランディングの先駆者的存在です。

特に注目すべきは、動画の活用。「ネスレシアター」というコーナーを設け、動画によるブランデッドコンテンツを掲載しています。
CMのような15秒、30秒枠でもなく、テレビドラマのような1時間枠でもない。エンターテインメントとして成立する5分程度のドラマを通して、ブランドの価値観・世界観を伝えています。

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テレビCMでは従来どおり認知獲得を狙い、ネット動画でブランドの世界観をじっくり伝えて深く共感してもらえるコミュニケーションを図る。既存メディアに依存する広告とオウンドメディア、そしてYouTubeの三方向からのアプローチで相乗効果を生んでいます。

カゴメでは、上位2.5%の顧客が売上の30%を占めているそうです。これは、お得意様がいかにカゴメの売上に貢献しているかの証です。そこで「&KAGOME」では、コアなファンにしぼったコンテンツを展開しています。
それゆえに「&KAGOME」のユーザーは、カゴメへのロイヤルティが高く、アクション率も高いのが強みです。

「カゴメ」と聞いて誰もが「トマト」を思い浮かべるでしょう。そういう意味でカゴメは、ブランディングに大成功した企業のひとつです。「カゴメといえばトマト」「トマトといえばカゴメ」とすぐに想起できるのは、ブランド力が相当強いということです。

しかしそんなカゴメも、多角化を狙いブランディングに失敗した過去があります。その教訓を活かし、約2,000あった商品数を半数近くに縮小。
続いて、講演を開催したり、工場見学に招待したりと、直接ユーザーと接触しながら啓蒙活動をすることで、ユーザーにブランド価値を伝えていくことに注力してきました。

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「&KAGOME」のユーザーと直接密なコミュニケーションを図る戦略は、そんな過去の苦い歴史から生まれたブランディングでもあるのです。

◆ブランディングの採点◆
5(ネスレアミューズ):5(&KAGOME)

「ネスレアミューズ」はネット動画、「&KAGOME」は小さなコミュニティ。それぞれアプローチ方法はまったく異なりますが、どちらも独自の企業文化と伝統に培われたノウハウから生まれた戦略といえます。どちらも他企業にはあまり見られないユニークなアプローチ方法ですが、インパクトの強さで互角といっていいでしょう。

【2】おや?まあ!へぇ~

「ネスレアミューズ」の動画コンテンツ「ネスレシアター」は、無料で楽しめる看板コーナーです。ここでしか観られないネスレのオリジナル作品や、世界のショートフィルムを公開しています。従来のテレビCMなどの広告と区別して、「ブランデッドムービー」と呼んでいます。
オリジナル作品には、平林勇監督の「上田家の食卓」と岩井俊二監督の「花とアリス殺人事件」がシリーズで展開されています。「上田家の食卓」にはMEGUMI、堀部圭亮などテレビでおなじみの俳優陣が顔を並べ、アニメ「花とアリス殺人事件」の声優は、蒼井優、鈴木杏とこちらも贅沢な布陣です。

「上田家の食卓」は、食卓を舞台に家族それぞれが日常の出来事を話すことから始まります。上田家のボケとツッコミ合戦が繰り広げられ、個性あふれる家族が贈る愛のコメディシリーズ。「健康」をテーマにしたコメディドラマでありながら、毎回「おや?まあ!へぇ〜」の連続で、ストーリーの最後がどんなオチになるのか楽しみな展開になっています。

「花とアリス殺人事件」は、2003年にキットカットの日本発売30周年を記念してネット配信された短編アニメーション映画で、3章4部構成で公開されました。現在はウェブでの公開は終了していますが、名作アニメとして話題になりました。

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上質なコンテンツを提供する「ネスレアミューズ」に対し、「&KAGOME」はあくまでもユーザーとの共創を貫いています。主なコンテンツは、「トークルーム」と「実になるおはなし」。

「トークルーム」はファンとカゴメとの相互コミュニケーションを図る目的で開設された、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の典型例です。会員がテーマを設定して他の会員の投稿が始まったり、会員同士でチャット的に使い始めたりと、活発に利用されています。また、ユーザー同士だけではなく、「&KAGOMEスタッフ」が、キャラクターイメージつきでスタンバイしています。

「実になるおはなし」は、トマトの機能性に関する「リコピン」や健康に関する「肝機能改善のメカニズム」など、カゴメならではの専門性の高い内容のコンテンツとなっています。
こうしたコンテンツやイベントを通じたコミュニケーションによって、「&KAGOME」のファンは現在約3万人。ファンの7割は女性で、30~60代まで幅広いファンがイベントに参加しているようです。

◆おや?まあ!へぇ~の採点◆
5(ネスレアミューズ):4(&KAGOME)

まったく対照的なコンテンツを並べる両メディアです。ブランデッドコンテンツにありがちな建前感やお行儀の良さを意識させずに、純粋にエンターテインメントとして楽しめる「ネスレシアター」。そして、ユーザーが楽しみながら積み上げていく「&KAGOME」のコンテンツの数々。鑑賞する楽しみと参加する楽しみ。どちらも魅力的なコンテンツであることは間違いありません。

【3】ソートリーダーシップ

「去年と同じことをするのは仕事ではなく、作業」

ネスレ日本の高岡浩三代表取締役社長がよく口にする言葉だそうです。「ネスレアミューズ」には、まさにこの高岡社長の哲学が反映されているといっていいでしょう。既成概念にとらわれないユニークなコンテンツづくりはネスレ日本の哲学であり、伝統芸ともいえます。

カゴメは、ブランドステートメントを「自然を、おいしく、楽しく。KAGOME」と定義。それぞれの言葉には、下記のような意味が込められています。

・自然:自然の恵みがもつ抗酸化力や免疫力を活用して、食と健康を深く追求すること
・おいしく:自然に反する添加物や技術にたよらず、体にやさしいおいしさを実現すること
・楽しく:地球環境と体内環境に十分配慮して、食の楽しさの新しい需要を創造すること

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カゴメがファンと一体化するという理念が建前でないことは、「株主10万人構想」を打ち立てたことからもわかります。1998年に約6,500名だった株主数は、2018年末時点で18万人を超えています。そして、その株主の99%は個人株主なのです。こうして、「ファン株主」という名前がカゴメで生まれました。

◆ソートリーダーシップ◆
4(ネスレアミューズ):5(&KAGOME)

両社とも経営理念を明確に打ち出していますが、社員の顔が全面に出ているわかりやすさで「&KAGOME」が少しリード。広報担当によるレポートや社員みずからコミュニティに参加するなど、ユーザーとの密なコミュニケーションを図る「&KAGOME」は、今後のオウンドメディアの指標になっていくに違いありません。

【4】解決策の提示

「顧客の問題解決こそ、マーケティングの本質」

「ネスレアミューズ」を手掛けた石橋昌文CMOは、「日経XTREND」のインタビューで高岡浩三社長の言葉を引き合いに、そのように語っています。

ユーザーの問題解決につながらないコンテンツでは、オウンドメディアをやる意味がありません。メーカー側の一方的な宣伝をするだけなら、広告を打てばいいだけです。
顧客の潜在的な問題を発見し、ブランドを起点に提供していくのがオウンドメディアの果たす大きな役割です。「ネスレアミューズ」は、健康をテーマにユーザーのための問題発見、問題解決のヒントを提供しています。

また、ネスレ日本が行っているユーザーとのコミュニケーション施策に、「ネスカフェ アンバサダー」制度があります。ネット時代になって、今や情報に接する機会は増えていますが、一方で実際に体験する機会、深く知る機会はかえって少なくなっているといえます。
企業が発信する情報をリアルな体験に結びつけていくことが、今後のオウンドメディアが成功するカギを握るともいえます。ネスカフェ アンバサダーは、問題発見から解決策を考える格好の施策なのです。

広くユーザーを集めるよりも、ユーザーとの深い関係作りを図る点で「&KAGOME」のスタンスと同じです。
そして、「&KAGOME」の最大の強みは、なんといってもユーザー自身が作り上げるコミュニティであること。先程ご紹介した、食の話題を中心に語り合える掲示板「トークルーム」に加え、家庭のオリジナルレシピを紹介し合う「レシピのーと」、食に関する疑問などを投票形式で解決する「どれにしようかな」など、すべてユーザー主体の問題解決型コンテンツとなっています。

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「&KAGOME」では、会員数よりもその中身を重視したKPI「アクション率」を設定。アクション率とは、具体的には「ログイン」「いいね」「コメント」「投稿」のアクションがどれだけ起きているかを計るそうです。
このアクション率は、現在二桁超えを記録。これは、平均的な企業のコミュニティサイトに比べても高いとのことです。

◆解決策の提示の採点◆
4(ネスレアミューズ):5(&KAGOME)

コンテンツを楽しみながら、あるいはネスカフェ アンバサダー制度を通じてユーザーとのコミュニケーションを図り、問題発見、問題解決を進める「ネスレアミューズ」。そして、ユーザーと一心同体となっていっしょに問題解決を図っていく「&KAGOME」。「ネスレアミューズ」は中・長期的視点、「&KAGOME」は短期的な視点での課題解決コンテンツといえるかもしれません。

【5】ストーリー性

「ネスレシアター」は、ストーリーありきで成立しているコンテンツです。わざわざ5分程度の動画にしているのですから、ストーリーがなければ意味がありません。企業色がほとんどないユーモアあふれるストーリーは、熱狂的なファンづくり、ロイヤルカスタマーの育成という点で、非常に効果的です。

例えば、「カメラを止めるな!」という映画がヒットしましたが、ネスレ日本提供で、「カメラを止めるな!スピンオフ『ハリウッド大作戦!』」というスピンオフムービーをAbemaTVで放送。AbemaTVで放送後は、「ネスレアミューズ」でも期間限定で無料視聴できるようにしました。
スピンオフムービーの途中でCMが流れるのですが、「カメラを止めるな!」と同じ出演者が登場してネスカフェ アンバサダーの役を演じるなど、粋な図らいで話題となりました。

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「&KAGOME」では、カゴメの商品を使ったレシピを投稿してもらったり、「会員限定」のイベントなども募集したりしています。また、イベント後のレポートや参加者の声もフィードバックされていて、コミュニティが活性化している様子が可視化されています。アンケートの募集に関しても、実際にユーザーの投票した票数やコメントを見ることができます。

◆ストーリー性の採点◆
5(ネスレアミューズ):4(&KAGOME)

エンターテインメント性の高さで「ネスレアミューズ」がややリード。企業の宣伝色をまったく感じさせない、単純におもしろいドラマを展開する「ネスレシアター」と、ユーザーが協同してストーリーを積み上げていく「&KAGOME」。人はストーリーがなければなかなか心を動かされることはありません。心が動かなければアクションを起こすこともありません。両社のメディアが展開するコンテンツは、ストーリーの紡ぎ方にもさまざまな形があることを教えてくれます。

総合結果

最後に、それぞれの項目の結果を合計してみましょう。

◆合計◆
23(ネスレアミューズ):23(&KAGOME)

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まったく互角の戦いで引き分けとなりました!コンテンツの作り方もユーザーとのコミュニケーションの図り方も一見まったく違うオウンドメディアですが、5つの指標で比較するとどちらもかなり高いレベルのオウンドメディアであることがわかります。

むやみに会員数を増やすことに終始せず、深いコミュニケーションを心掛けることで、高いアクション率やNPS(ネット・プロモーター・スコア:顧客ロイヤリティを測る指標)を達成しています。

オウンドメディアにおいては、「ユーザー視点のコンテンツ」が重要なことは言い尽くされていますが、本当の意味でそれを実現できている企業は多くありません。
予算や人的リソースを理由にオウンドメディアをあきらめているウェブ担当者もいるかもしれません。しかし、動画コンテンツとリアルなユーザーとのコミュニケーションに集約する「ネスレアミューズ」と、ユーザー起点でコンテンツを積み上げる「&KAGOME」から学べることは多いと思います。

リアルのコミュニケーションがどのようなコミュニティを作るのか、活性化しているコミュニティはどのような作り方がされているのか。有効だと思う施策はぜひ参考にして取り入れてみてください。

著者紹介

成田 幸久(なりた ゆきひさ)
成田 幸久(なりた ゆきひさ) コンテンツディレクター(コンテンツマーケティング戦略支援・制作支援)

AMEX会員誌「IMPRESSION」や「ワイアード」日本版、JAL機内誌「winds」などで副編集長を務めた後、眞鍋かをりなどの著名人ブログをプロデュース。ほか、「ギズモード・ジャパン」創刊ディレクター、セブン–イレブンとヤフーの共同事業メディア「月刊4B」編集長、オウンドメディアのアドバイザリー支援など、ウェブメディアの企画・運用など実績多数。著書に『愛されるWebコンテンツの作り方 』がある。

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