心理戦の三原則【コンテンツづくりの三原則 第12回】

心理戦の三原則【コンテンツづくりの三原則 第12回】

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オウンドメディア運営において、コンテンツづくりは最大の肝です。「コンテンツづくりの三原則」では、毎月1つのコンテンツづくりのテーマや目的を取り上げ、そこに紐づく3つのトピックを深掘りしていきます。

第12回は「心理戦の三原則」。コンテンツを制作するにあたって意識しておきたい「カクテルパーティー効果」「スノッブ効果」「ウィンザー効果」の三原則について解説します。

カクテルパーティー効果

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多くの人が集まるパーティーで、さまざまな雑音や会話が入り交じる中、ふと自分の名前を呼ばれたり、自分が興味・関心のある話がされたりしていると、突然その話が耳に入ってくることを「カクテルパーティー効果」といいます。

カクテルパーティー効果とは、「音声情報を無意識に選択して聞き取る」ことで、1953年、心理学者のコリン・チェリー氏によって提唱されました。人は無意識のうちに自分に関係のある話題をキャッチする傾向があるというわけです。

コンテンツづくりにおいても、このカクテルパーティー効果を活かさない手はありません。ユーザー(消費者)へのアプローチも、「あなたに向かってアピールしていますよ!」というメッセージを強く打ち出すことで、ユーザーは自分事化して興味を持ってくれやすくなります。

カクテルパーティー効果は「選択的注意」とも呼ばれ、聴覚だけでなく、視覚などにも影響する、私たちの意識と脳のメカニズムを指しているそうです。
街中を友人といっしょに話しながら歩いていて、自分の大好きなタレントに似ている人を見つけたら、すぐに気づくのではないでしょうか。ただ、そのタレントのファンでない友人は、「え、本当?」という反応だったかもしれません。

一方、毎日歩いている通勤の道で突然空き地を見つけたとき、その場所に以前はどんな建物があったのか覚えている人は少ないに違いありません。自分が通っていたお店や気になっていた家でもない限り、覚えている人はまずいないでしょう。

私たちの脳は、すべての情報をインプットして処理することはできないため、意識したものだけをピックアップし、意識していないものは見えない、聞こえないようにできているようです。
つまり、カクテルパーティー効果は、ユーザーに存在を意識させ、「オンリーユー(あなただけに)」という意思表示をすることです。この、カクテルパーティー効果を最大限に活用しているのがペルソナ設定です。
送りたいメッセージは不特定多数の大勢ではなく、いかに「あなただけに投げかけている」と感じてもらえるかがポイントとなります。つまり、「これは自分に関係している」と感じてもらう必要があります。

ペルソナ設定の3つのルール

カクテルパーティー効果を活用するためには、次の3つのルールを守ってペルソナを設定することが重要です。

・オンリーユーになっているか?
ペルソナ設定は、顔の見える「一人」にフォーカスするための手法です。不特定多数に「皆さん」と呼びかけても他人事となり、メッセージは誰にも届きません。
アンケートに答えたり、買い物をしたりしたときに、後からBCCで招待メールや宣伝メールを送られた経験がある方は多いのではないでしょうか。BCCは、最初から不特定多数への一斉メールであることが明らかなので、受け取った側にとっては、迷惑な郵便ポストのチラシと同じ印象を受けてしまいます。
こういう、不特定多数に送られた告知メールを読む人はまずいません。自分には関係ない迷惑メールだと判断してしまうからです。BCCメールは、「不特定多数に声をかけているのであって、あなたに個別にお願いしているわけではありません」と表明しているようなものです。顔の見える一人にフォーカスするためには、個人の顔が具体的に浮かぶような人格やライフスタイルを設定することが必要不可欠なのです。

・1%ではなく100倍になっているか?
ターゲットの母数が減ることを懸念して、ペルソナのターゲットをむやみに広げることは大きな過ちです。ターゲットをひとつの属性に絞ることは、ほかの大多数を切り捨てることではありません。ペルソナを通してターゲットの典型的な心理を理解することで、よりターゲットに適した企画やサービスを考えることが可能になります。
ペルソナ設定は、100人に声をかけて1人(1%)だけに興味を持ってもらう手法ではなく、あるペルソナ設定をした確実な一人に訴求し、そのペルソナに共感する100人(100倍)を獲得する手法なのです。

・占い師のように相手のことを観察しているか?
ペルソナ設定には、定量調査などで収集されたユーザーの基本的データに加え、「一人の生身の人間」としてのストーリーが欠かせません。重要なのは、ユーザーも気づいていない深層心理にまで踏み込み、「一人の生身の人間」を理解することです。非科学的な占いが現代社会でも人気があるのは、過去の人間の営みを類型化し、その類型化したパーソナリティーと価値観を誰もがすぐに理解し、記憶できるストーリーとしてアウトプットしているからにほかなりません。相手の立場になって深層心理に踏む込むことで、「私のことを理解してくれている」と、人は心を動かされたり、考えさせられたり、安心したりするのです。
また、インターネットは、ユーザーの行動履歴や興味のある分野についての情報をデータとして蓄積することが可能なため、ペルソナのターゲティングが比較的容易にできるという特性があります。ターゲットを明確にするためにもユーザーデータを分析し、ステップメールやSNSでのコミュニケーションなどでカクテルパーティー効果を応用することをおすすめします。

スノッブ効果

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スノッブ効果とは、希少性が高く、手に入れにくい物ほど欲しくなるという心理です。アメリカの理論経済学者であるハーヴェイ・ライベンシュタイン氏によって提唱されました。スノッブ効果は、みんなと同じ物は持ちたくない、ほかの人とは違う商品を所有することで希少性への欲求を満たしたいという心理作用にもとづいたものです。
金やダイヤモンドが欲しくなることは、スノッブ効果の典型例です。金やダイヤモンドに、「役に立つ、立たない」という実用性が求められることはほとんどありません。希少性こそがその価値なのです。

最近では、コロナ禍によってマスクやトイレットペーパーが店から消えたのは記憶に新しいところです。テレビ通販で「今から30分以内の方に限定販売!」といったセールスや、ネットで行われる時間限定のフラッシュセールなどもこのスノッブ効果を狙ったものです。AKB48グループの握手会も、スノッブ効果を活用したプロモーションです。

高価な物を所有することにステータスを感じるヴェブレン効果

スノッブ効果に高価格戦略をプラスしたものが「ヴェブレン効果」です。ヴェブレン効果とは、高価な物に対して購買心理が高まるという現象のことです。人が強く持っている欲求として、自分の優越性を求める「自我欲求」があります。つまり、他人の持っていない特別な商品に魅力を感じます。簡単にいえば、高価な物を持つことにステータスを感じて、購買心理が高まるという心理です。

コロナ禍でマスクが市場から消えた2020年4月に、ホリエモンこと堀江貴文氏は、あえて1万1,000円の高級マスクを販売して、あっという間に完売したそうです。「高すぎる!」という声があったものの、それでも堀江氏が想定する購入者数はやはりいたわけです。これはまさに、スノッブ効果とヴェブレン効果を狙った戦略です。

コロナ禍で一流ホテルが始めた期間限定の月額サブスクリプション契約の宿泊プランも、ヴェブレン効果を狙ったサービスのひとつでしょう。

ウィンザー効果

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3つ目はウィンザー効果です。ウィンザー効果とは、直接伝えられた情報よりも第三者を通して伝わった情報を信頼してしまう心理のことで、「第三者が発信した情報は信頼されやすい」という心理的傾向を指します。

アメリカの作家アーリーン・ロマノネス氏による「伯爵夫人はスパイ」の主人公であるウィンザー伯爵夫人の「第三者の誉め言葉がどんなときにも一番効果があるのよ、忘れないでね」というセリフが語源だとされています。

子供の頃に、こんな経験をした方もいるかもしれません。「◯◯ちゃんが、あなたのこと好きなんだって」「あなたはどう思うの?」と、友達を経由してワンクッション置いて告白されるのもウィンザー効果のひとつでしょう。
知らない子が突然目の前に現れて告白されても、驚いてどう反応していいかわからず、戸惑いますよね。それが遠巻きに間接的に言われると、その子を少しずつ意識するようになって、その子のために友達が応援していることも伝わってきて、いつの間にか好感を抱くこともあるのではないでしょうか。

ウィンザー効果を応用したマーケティング手法

ウィンザー効果の応用といえるものにSNSによる口コミマーケティングやインフルエンサーマーケティングがあります。
どこかいいカフェや居酒屋はないかと探しているとき、「食べログ」などの口コミを参照したことがある人は多いのではないでしょうか。また、Amazonで商品や本を購入するときに購入者のレビュー参照することも当たり前となっています。たとえ匿名の情報でも、実際にお店に訪れた人や購入した人による率直な感想だと思われるため、企業から発信した情報より客観性のある情報だと信頼されるのです。

2020年に発表されたニールセン デジタル株式会社の分析「長期化するCOVID-19の影響下における消費者コミュニケーションとは」によると、日本の消費者にとって最も信頼度が高い情報ソースは「友人や家族からのすすめ」(54%)、2位は「ブランドのウェブサイト」(38%)、3位は「インターネット上の消費者の口コミ」(36%)という結果になっています。

また、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が、2018年に20歳以上のインターネット利用者を対象に行った「口コミサイト・インフルエンサーマーケティングの動向整理」では、「今までに利用したことがない商品やサービスを購入するときに、インターネット上の口コミやレビューを確認していますか」という設問に、34.4%の人が「確認する」、50.0%の人が「確認することのほうが多い」と回答しました。8割以上の人が、インターネットの口コミを重視していることになります。

このように、友人や家族を含めた口コミはブランドへの信頼感を高め、ユーザーの購買行動に大きく影響します。
ただ、あなたの会社のブランド力がまだ弱く知名度が低い場合は、口コミマーケティングはいきなり単発でやっても簡単には効果が出ないかもしれません。口コミマーケティングは、人が誰かと共有したくなるような価値を提供することが重要です。拡散させるためには、まずは広めたくなるような材料を提供する必要があります。

ウィンザー効果を活用した口コミマーケティングの種類

ウィンザー効果を上手に活用した口コミマーケティングには、主に「SNS」「カスタマーレビュー」「インフルエンサー」「アンケート」の4つがあります。


・SNS
SNSは、多くの人が利用しており、口コミマーケティングを促進するのに最適のチャネルです。Twitter、Instagram、Facebookなどで、共有したくなる体験をしてもらえば、口コミマーケティングは自然と促進されます。音楽フェスのような大規模なものでも、カフェのケーキを紹介するような小規模なものでも構いません。
口コミマーケティングでは、ハッシュタグを作成するのもいい方法です。製品、イベント、キャンペーンのハッシュタグを作成して、拡散してもらいます。社員のSNSの個人アカウントで情報共有してもらうのも有効です。その投稿によってより多くの人にリーチし、新しい会話が始まるかもしれません。

・カスタマーレビュー
カスタマーレビューは、製品を広める重要な存在です。製品のレビューをブログやSNS、Amazonのレビューなどに書くよう、ユーザーにお願いしてみるのもいいでしょう。ただし、割引や商品提供などのインセンティブを与える場合は、必ずPR・広告表示が必要になります。ステマ(※)にならないよう、細心の注意を払ってください。批判的なコメントも恐れず、ユーザーの正直な感想・意見があることで、初めて信頼性の担保になると理解しておきましょう。

※ステマ(ステルスマーケティング):企業が宣伝・プロモーションであることを隠して、消費者になりすまして口コミを書いたり、インフルエンサーにお金を払って宣伝を依頼したりする行為。

・インフルエンサー
インターネット上で口コミを広めるためには、影響力や拡散力が必要となります。そのため、口コミマーケティングを行うにあたり、SNSで影響力のあるインフルエンサーに協力してもらうことが多くなっています。
インフルエンサーとは、多くのフォロワーやファンを持っており、世間に与える影響力が大きい人たちを指します。インフルエンサーの例としては、メディアへの露出が多い有名人に限らず、多くのファンを持っているブロガー、YouTuber(ユーチューバー)、インスタグラマーなども含まれます。ただ、インフルエンサーマーケティングの場合、どれだけ説得力があるか、どれだけ真実味があるかが勝負ですので、必ずしも有名だから効果が高いとは限りません。また、加減を誤ると、広告やステマとみなされて敬遠されるリスクもありますので、扱い方には十分注意する必要があります。

・アンケート
第三者の意見として最も基本的な手段はアンケートです。アンケートには、はがきによる郵送、ウェブフォームへの入力、街頭インタビュー、モニター募集といった方法があります。ウェブフォームはコストがかからない、インタビューは対話形式で深掘りができる、モニターは意識の高い顧客から積極的な意見が得られるなど、それぞれメリット・デメリットがありますので、自社の目的に応じて最も適切な方法で集めるといいでしょう。

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コンテンツ制作に役立つ行動心理学

以上、コンテンツを制作するにあたって意識しておきたい、カクテルパーティー効果、スノッブ効果、ウィンザー効果の「心理の三原則」について解説しました。
行動心理学にはほかにも、「バンドワゴン効果」「カリギュラ効果」「ハロー効果」「ザイオンス効果」「バーナム効果」「プラシーボ効果」など、数十もの心理的効果があります。興味のある方は、「行動心理学」「マーケティング心理学」などで調べてみてください。まずは最低限、カクテルパーティー効果、スノッブ効果、ウィンザー効果の3つを知っておくだけでもコンテンツ制作に役立つでしょう。

このような行動心理学を学ぶことは、それほど難しくはありません。なぜなら、ほとんどすべての人が、日常生活の中ですでに体験しているからです。
行動心理学は、コンテンツ制作やウェブマーケティングに限らず、日頃の友人や家族との関係構築や営業の中でも関わっています。自身の普段の買い物を思い出して、どんな行動心理学が使われていたか、検証してみることから始めてみてはいかがでしょうか。

著者紹介

成田 幸久(なりた ゆきひさ)
成田 幸久(なりた ゆきひさ) コンテンツディレクター(コンテンツマーケティング戦略支援・制作支援)

AMEX会員誌「IMPRESSION」や「ワイアード」日本版、JAL機内誌「winds」などで副編集長を務めた後、眞鍋かをりなどの著名人ブログをプロデュース。ほか、「ギズモード・ジャパン」創刊ディレクター、セブン–イレブンとヤフーの共同事業メディア「月刊4B」編集長、オウンドメディアのアドバイザリー支援など、ウェブメディアの企画・運用など実績多数。著書に『愛されるWebコンテンツの作り方 』がある。

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