シド・フィールドの三幕構成【コンテンツづくりの三原則 第9回】
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オウンドメディア運営において、コンテンツづくりは最大の肝です。「コンテンツづくりの三原則」では、毎月1つのコンテンツづくりのテーマや目的を取り上げ、そこに紐づく3つのトピックを深掘りしていきます。
第10回は「視点の三原則」について解説します。
視点の三原則とは、次に挙げる3つの視点で事象を見ることを意味します。
コンテンツを制作する上では、この3つの視点で情報を収集・解析・発信することが必要不可欠です。
鳥は、空の上から全体像を見ることができます。つまり、「俯瞰」することができる視点が鳥の目です。言い換えれば、視野の広さです。全体を見ることができなければ、現在の自分の立ち位置、目的地、目的地までの道のり、目的地にたどり着くための方法や条件といったことがわからずに、間違った方向に進んだり、同じ場所をぐるぐると回っていたりということになります。
こうした視点を持つことで、「漏れやダブりはないか?」「向かっている方向は間違っていないか?」「無理な構造になっていないか?」「おかしな点がないか?」ということが見えてきます。
そのためにはまず、全体像を把握しなければなりません。具体的には「SWOT分析」「ペルソナ設定」「ポジショニングマップ」が、全体を俯瞰する上では有効な手段です。
まずは、情報を発信するあなた(自社)の実態について、客観的な分析をする必要があります。情報を発信する自社の実態を洗い出すのによく使われる手法がSWOT分析です。SWOT分析の「SWOT」は「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」の頭文字から取られた言葉です。
SWOT分析によって、競合他社と比べ、自社の強みと弱みは何なのか、ビジネスを展開するにあたってどんな機会や脅威があるのかを洗い出します。その上で、コンテンツを作る際に何を訴求すべきか、弱みをいかにして強みに変えるかを考えます。
近年、働き方改革の一環で認知されつつあるコワーキングスペース事業を例に、どのようなSWOT分析ができるのか見ていきましょう。
<Strengths(強み)>
<Weaknesses(弱み)>
<Opportunities(機会)>
<Threats(驚異)>
このように、まずはSWOT分析で自社の立ち位置と周囲環境を俯瞰的に見て、状況を把握します。
SWOT分析によって自社を取り巻く環境を俯瞰して把握したら、次はペルソナの設定です。
ここでは、誰を顧客にすべきかターゲットを絞り込みます。ペルソナとは、企業にとって象徴的な顧客モデルのこと。ユーザーの隠れたニーズや行動パターンなど、観察や調査で得られたデータを、一人のユーザーとして凝縮した人物モデルです。
それでは、今度はコワーキングスペースを活用したいと考えている企業や個人のペルソナを設定してみましょう。ペルソナを設定するには、大きく「基本情報」「意識特長」「行動特長」に分類して描き出します。
・基本情報
30〜40代までの都市部および地方に在住する、ビジネスパーソンおよびフリーランス。特にディシジョンメーカー(決裁権者)とマネージャー層がコアターゲット。
・意識特長
テレワークをする必要性を感じているが、会社全体のコンセンサスが得られていない。
新しい刺激に貪欲で、世の中の変化に敏感なユーザーに向けて、有益かつ自分らしい働き方を実現し、働きがいを見つけたい、実生活や人生において具体的な行動の変化を起こしたいと考えている。
・行動特長
ネットやSNSを使った最新情報の収集に意欲的。
平日と休日のメリハリをつけたいと考えており、休日はもっぱら家族あるいは友人たちとアウトドア・レジャーを楽しむ。平日は、Netflixなどで意欲的に流行のドラマや映画を観るのが趣味。
こうしたペルソナを設定することで、企業視点ではなく、ターゲット視点の物語が提供でき、ターゲットの理解が深まるので、共感を得る企画を考えやすくなります。
そして、プロジェクトのメンバー間で、一貫したターゲット像が共有できるため、方向性がブレないようにすることができます。
最後は、ポジショニングマップの作成です。ポジショニングマップを作ることによって、市場における自社の立ち位置を明らかにします。縦軸と横軸の2軸で4つの象限を作り、競合他社の製品やサービスをマッピングした上で、自社がどういった領域で勝負していくべきなのかを明確にすることができます。
ポジショニングマップを作成することで、「自社の現在の立ち位置がわかり、目指す方向が見える」「競合相手が明らかになる」「空白のポジションを発見し、新しい市場を打ち出せる」という、マーケティング戦略を策定するための3つのメリットが生まれます。
それでは、コワーキングスペース事業を例に、簡単なポジショニングマップを作成してみましょう。
このポジショニングマップの作成において目指すべきゴールは、「空白のポジションを発見し、新しいコワーキングスペース事業の市場を打ち出す」ことです。
自社の商材に合わせて、軸はいろいろ考えられます。今回は、縦軸を「都市型」と「郊外型」、横軸を「低価格」と「高級」に設定しました。
自社のコワーキングスペースが「都市型」「郊外型」のどちらに位置するのがベストなのかを考えるとき、例えばターゲットのニーズを調査してみます。
ここでは、リクルート住まいカンパニーが関東圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)に居住している20歳以上の男女を対象に実施した「SUUMO住みたい街ランキング2020 関東版」を参考にしてみましょう。
ランキングの結果は、下記のとおりです。
■[関東]住みたい街(駅)ランキング
1位 横浜(京浜急行本線)
2位 恵比寿(JR山手線)
3位 吉祥寺(JR中央線)
4位 大宮(JR京浜東北線)
5位 目黒(JR山手線)
比較的大都市に集中していますが、おしゃれで便利な街が好まれており、都市型のコワーキングスペースが集中している新宿・池袋・渋谷・大手町といった地域ではありません。
一方、「住民に愛されている街」になるとかなり様相が違ってきて、郊外型の傾向が強まってきます。事情が許せば、やはり環境の良い所に住みたいというニーズが高いことが想定できます。
■[関東]住民に愛されている街(駅)ランキング
1位:片瀬江ノ島(小田急江ノ島線)
2位:馬車道(みなとみらい線)
3位:みなとみらい(みなとみらい線)
4位:代官山(東急東横線)
5位:千駄ケ谷(JR総武線)
上記の情報をもとにポジショニングマップを設定すると、「郊外型」「高級」は、ほかのコワーキングスペース市場に比べてまだ規模は小さいものの、未開拓のブルーオーシャンともいえます。地価がまだ安く、遊休施設が多い郊外型を有効活用するという選択肢が浮かび上がってきます。
また、「都市型」「高級」となると、大手不動産を中心にすでに市場に参入しているので、競合するにはそれなりの資金と体力が必要だということが見えてきます。
このように、ポジショニングマップを設定することで、自社の立ち位置、競合優位性を見つけることができます。
ユーザーに情報を届けるための方法として、どういった点で訴求するかを考えるために有効といえるでしょう。
成熟したグローバル社会は「VUCA時代」ともいわれます。VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字から取られたものです。つまり、明確な正解がなく、先行きが見えない時代だからこそ、より時代の流れを見極めながら決断することが重視されてきています。
魚の目とは、VUCA時代の潮流を見逃さずに、ビジネスチャンスに結びつけるための視点です。大局的な時流を読み、計画的にスケジュールを組みつつもPDCAを回し、適宜潮流を見ながら調整していくことが重要です。
魚の目の視点がなければ、衰退している市場や過当競争のレッドオーシャンに参入してしまったり、トレンドを理解せずに古臭い手法で満足したり、計画性のない動きをしたりするおそれがあります。
ITの進歩・発展を中心に、時代の流れはかつてないスピードで変化しています。
現代は「いいモノ」を作れば、必ずしも売れるという時代ではなくなっています。人々の消費の関心は「モノ」から「ヒト・コト」へとシフトしています。ヒト・コトとは「体験」です。車も洗濯機もテレビもスマートフォンも、モノは市場にあふれ、付加価値をつけることが難しくなり、需要は減ってきています。モノに新たな付加価値をつけるには、「したいコト」を考えなければなりません。そうした変化を読み取れるかどうかを見極めるのが魚の目です。
潮流が早い今日では、昨日まで正しかったことが明日には間違っていることも起こりえます。
「これまでこのやり方で成功してきた」「この業界では常識だ」「権威が言っているから正しい」「競合はみんなそうしている」…。
潮流を読めないと、こういった固定観念にとらわれてしまい、機会損失を招きかねません。
経営思想家のクレイトン・クリステンセン氏は、著書「イノベーションのジレンマ」(翔泳社)で、企業は成功が大きければ大きいほど築いてきた資産が大きいため、イノベーション(変革)が困難になるというジレンマを抱えていると述べています。
デジタル化の波についていけずに苦労する新聞・出版などの大手メディア企業や、モノからコトへのシフトに対応できず、付加価値をつけられないまま衰退していく家電業界はその典型です。
反対に、資産を持たないスタートアップや個人には、チャンスが多いともいえます。小さくて若いゆえに機動力を持ち小回りが利くため、魚の目で時代の流れを読むのが得意でもあります。
資産が大きい老舗企業ほど、下記のような課題を頭で理解しながらも、なかなか動けない企業は多いでしょう。しかし、だからこそ魚の目で潮流を読む必要があるのです。
<コンテンツづくりにおいて潮流を読むためのポイント>
コンテンツづくりにおいては、このように潮流を読んで、ターゲットのニーズに合っているかを常に検証し、コンテンツの再構築を習慣化することが求められます。
虫の目とは事象を細分化し、掘り下げて細かく見ることです。見えないモノを見る目、そして普段見ない角度から物事を見ることを意味します。つまり、それは視点の深さ、観察力、洞察力、論理的思考のことを指します。
ターゲットであるユーザー(消費者)に、競合と差別化した商材であることを伝えるためには、モノ(商材)に新しい付加価値を与えなければなりません。そのときに欠かせないのが、新しいコト(体験)です。
視点の深さ、観察力、洞察力、論理的思考は、新しい付加価値を見つけるために必要な能力です。
「セレンディピティ(serendipity)」という言葉をご存じでしょうか。
これは、童話「セレンディップの3人の王子」のエピソードから生まれた造語で、「偶然に幸運を見つける能力」のこと。あるいは、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけることをいいます。
このセレンディピティこそが、虫の目といってもいいでしょう。
虫の目があれば、簡単に見過ごしてしまうような小さなことにも気づくことができ、これまで思いもしなかった解決の糸口を見つけられることがあります。
ターゲットを絞って、狭く深く見ていく。そんなときに、虫の目が大いに役に立つのです。
例えば、「コワーキングスペースの売上が減っている」という課題が生じた場合、その課題の原因を特定する必要がありますが、漠然と減少する売上を見ていても状況は変わりません。そこで、虫の目を使います。
コワーキングスペースをなぜ利用するのか、まずは目に見えるニーズを洗い出してみます。
<コワーキングスペースを利用するニーズ>
ざっと、こんなことを思い浮かべることはできるでしょう。
しかし、上記のようなニーズに応えるべく商材を展開したにもかかわらず、売上が伸びない、あるいは減少しているとしたら、その現状把握と原因究明をして、具体的に改善していかなければなりません。
<ニーズに対する現状把握>
このように、コワーキングスペースのニーズに、ユーザーは本当に満足できているのか、物事を細分化することで原因を特定し、具体的な行動に落とし込むことができます。
そして、具体案に落とし込むときには、虫の目で「逆説」「反対」「非常識」といった、違った角度から注視することで、新しいアイディアを生みます。
<現状把握に対する改善点>
そして、多くのコワーキングスペースの運営状況を見て、その常識を覆してみます。
<具体的なアイディア例>
このように、競合他社がまだやっていないことを考えてみることで、新たな潜在ニーズを発掘します。
もちろん、新規事業となればリスクが伴います。しかし、リスクを回避していては、会社の成長は困難でしょう。
前例を踏襲しているだけでは、時代に取り残されます。課題が漠然としているとき、壁にぶちあたっているとき、トラブルが起きたときなど、問題が発生したら、虫の目でより細かく見てみることが必要です。
だからこそ、鳥の目、魚の目で全体を見て、虫の目で詰めていく必要があります。
つまり、消去法ではなく、これまでにない市場を創造することで、現状の打破を狙わなければならないのです。
「本当に大切なものは目に見えない」とは、童話「星の王子さま」でキツネが王子さまに言った有名な言葉ですが、この目に見えないものを見る作業が、これまでご紹介した3つの目なのです。
鳥の目で全体を俯瞰し、魚の目で時代の潮流を読み、虫の目で見えないものを探すことが、コンテンツづくりの基本です。
キツネと友達になりたい王子さまは、キツネに「おれは飼い慣らされていないから」と断られます。そこで、王子さまはキツネにこう聞きます。
「探しているのは友だちだよ。飼い慣らす、ってどういう意味?」
「みんなが忘れていることだけど」とキツネは言った、「それは、絆を作る、ってことさ……」
「飼い慣らす」とは、関わりを持つことで責任が生まれる。その後、努力してお互いに絆を作っていくことなのです。
王子さまはかつて美しいバラの世話をしていましたが、わがままでトゲのあるバラに尽くすことに嫌気がさして、別れてしまいました。しかし、王子さまはバラがなぜわがままを言っていたのか、なぜトゲがあるのかをまったく見ようとも、考えようともしませんでした。
キツネは王子さまにこんな秘密を教えます。
「飼い慣らしたものには、いつだって、きみは責任がある。きみは、きみのバラの花に責任がある……」
「星の王子さま」サンテグジュペリ作、池澤夏樹訳(集英社文庫)
企業がユーザーと信頼関係を結び、友達になるには「飼い慣らす」ことが必要なのです。
王子さまが砂漠の中で井戸を見つけ、無数の星の中に1本のバラを見つけたのは、鳥の目、魚の目、虫の目で「目に見えない大切なもの」を見つけたからなのです。
AMEX会員誌「IMPRESSION」や「ワイアード」日本版、JAL機内誌「winds」などで副編集長を務めた後、眞鍋かをりなどの著名人ブログをプロデュース。ほか、「ギズモード・ジャパン」創刊ディレクター、セブン–イレブンとヤフーの共同事業メディア「月刊4B」編集長、オウンドメディアのアドバイザリー支援など、ウェブメディアの企画・運用など実績多数。著書に『愛されるWebコンテンツの作り方 』がある。
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