嘘の三原則(忖度/隠蔽/無知)【コンテンツづくりの三原則 第3回】

嘘の三原則(忖度/隠蔽/無知)【コンテンツづくりの三原則 第3回】

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オウンドメディア運営において、コンテンツづくりは最大の肝です。
「コンテンツづくりの三原則」では、毎月1つのコンテンツづくりのテーマや目的を取り上げ、そこに紐づく3つのトピックを深掘りしていきます。

3回は「嘘の三原則」。コンテンツを作るときには、「忖度」「隠蔽」「無知」から嘘が発生する危険性があります。フェイクニュースのように意図したコンテンツではなくても、企業やメディアが情報を発信する際には、無意識のうちに嘘をついてしまう危険が常につきまといます。そして、その嘘が露呈すれば、一瞬にして信頼を失います。今回は、そんな嘘をつかないための方法について解説します。

「忖度」が嘘を助長させる

芸人、絵本作家、イベントプロデューサーなど、さまざまな分野で活躍するキングコングの西野亮廣氏は、芸人として「食レポとひな壇はやらない」というポリシーを貫いているそうです。理由はどちらも、テレビ局やスポンサーに忖度をして、嘘をつかなければならないからとのこと。
出された料理がおいしくないのに、「おいしい!」と嘘の笑顔を振りまかなければならない。バラエティで自分の出番を増やすためにMCや大物タレントに気を使う。おもしろくない話題でも、雰囲気に合わせて盛り上げるために大声で笑う。「コスパが悪い」と彼流の言い方をしていますが、そんな忖度は自分の芸人としての幅を狭めてしまうと考えているようです。

「売れているからそんなことが言えるんだろう」という声も聞こえてきそうですが、西野氏はデビュー時からそのポリシーを貫いてきたようです。

確かに、食レポでまずさをアピールする番組は見たことがありません。まずくはなかったとしても、驚くようにおいしいわけでもない。そんなとき、「う〜ん、まずくはないけど、まあまあかな」と言えるでしょうか。そんなコメントが出る食レポがあってもいいと思いますが、金太郎飴のような反応しかしない食レポがほとんどです。なぜなら、「おいしい、まずい」は極めて主観的な感想なので、訴訟に発展するリスクもあるからです。
実際に食レポの達人として知られるヨネスケ氏は、ある番組で出された料理に対し「うまい、うまい」と言ったものの、翌日の生放送で店の悪口を連呼したことで店主から訴えられ、しかも敗訴してしまったそうです。

ステマの危険性

企業がメディアに広告を出稿するときは、この忖度の罠があちこちに張り巡らされているので気をつけなければなりません。広告表示をしないで記事を装って商品の宣伝をするステマ(ステルスマーケティング)という悪質な広告があります。
最近はあまり聞かれなくなりましたが、一時期かなりこの手法が横行したため、一般社団法人日本インタラクティブ広告協会(JIAA)が、20153月に「インターネット広告倫理綱領及び掲載基準ガイドライン」を改定。同時に「ネイティブ広告に関する推奨規定」を公開しています。とはいえ、決してなくなったわけではありません。ステマは法的に罰則があるわけでもなく(米国では違法)、ある程度の定義はされたものの、まだグレーゾーンは多いのです。

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最近では、京都市が施策PRのため、吉本興業所属の漫才コンビがTwitterでこの件についてツイートしたら100万円を支払うという契約を結んでステマの疑惑をかけられたり、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社が映画「アナと雪の女王2」で漫画インフルエンサーを起用したりしたことが問題になりました。「アナと雪の女王2」では、7人の漫画家が一斉に映画の感想を描いた漫画を投稿し、不審に思ったユーザーから指摘があり、ウォルト・ディズニー・ジャパンは正式に謝罪することになりました。にもかかわらず、別の作品でも同じことが行われているのではという指摘を受けて、ウォルト・ディズニー・ジャパンは再び謝罪。

ウォルト・ディズニー・ジャパンの件はわかりやすい例ですが、まだグレーゾーンが多いだけに、インフルエンサーの忖度によってステマの疑いが濃いコンテンツが作られることが少なくありません。特に、化粧品やファッション業界などは、インフルエンサーを目指す若い女性がこうした企業のPRコンテンツに携わることが実績となり、ステータスのひとつとなるため、企業に忖度した記事を書くことが多々あるといわれています。

企業はインフルエンサー(もしくは予備軍)に、あからさまに「うちの商品を宣伝してください」とは言わないまでも、試供品と称して無料で商品を提供して記事を書かせます。そこでインフルエンサーは、企業から仕事がもらえるかもしれない(あるいは原稿料という名目ですでにもらっている)と、忖度して企業に都合の良い記事を書いてしまうのです。

企業やメディアは通常「PR」「広告」「Sponsored Contents」など、その記事が広告である旨を明記するのですが、それでも一般のユーザーには気づかれないくらい薄く淡い色で小さく表示されていることがほとんどです。ステマではないかと指摘されたときに、「ちゃんと明記してあります」と言い逃れするためです。

また、こういったステマまがいの記事でなくても、ユーザーに忖度をして媚びを売るような記事が書かれることもあります。予算がないメディアだと、取材をしないで資料をもとにお店や観光地の記事をまとめることも少なくありません。そうすると、書く前から「このお店の◯◯はおいしい」と仮説を立てて書くことになります。取材をしていないので、本当はどんなおいしさなのかわかりません。過去に書かれた記事を切り貼りしてつなげて、「おいしい」という結論に導くように書かざるをえません。

企業が情報を発信する際に、忖度は往々にしてユーザーを裏切る行為となるハイリスク・ノーリターン、百害あって一利なしの根回しなのです。

「隠蔽」が嘘を上塗りする

マーケティング業界にはユーザーに対して嘘偽りのない情報を提供し、ユーザーの利益を追求する「アドボカシーマーケティング」という考え方があります。「アドボカシー(advocacy)」とは、「支援」「擁護」「代弁」といった意味を持ちます。ユーザーとの信頼関係を築くことを目的に、徹底的に顧客本位で接するマーケティング手法のことです。

SNSによって一般の人たち同士での情報交換や発信が容易になった今、企業が都合の悪いことを隠すのは難しくなっています。ユーザーから信頼を得ることで長期的な関係性を構築し、利益を目指さなければならなくなったのです。こうした状況が、アドボカシーマーケティングが注目されるようになった大きな要因です。
逆にいえば、アドボカシーマーケティングは、信頼関係構築のための強力な武器にもなります。企業が誠実に情報を発信すれば、信頼関係は強固になります。

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例えば、ソフトバンクグループ株式会社の孫正義代表取締役会長兼社長は、Twitterで「簡易PCR検査の機会を無償で提供したい。まずは100万人分」とツイートして批判されたとき、「評判悪いから、やめようかなぁ」と、中止を示唆し、すぐにマスク100万枚の無償提供に切り替えました。
また、医療機器の手配にも尽力されていることに対して、「孫正義さん、売名行為をやめなさい!!本業が赤字で傾いています。株主や社員の期待を裏切りしますよ」という声に対しても、「そうですね。本業が創業以来最大の赤字です。懸命に朝から夜中まで業績回復に頑張っています。でもに苦しんでいる人々の事が気になって投資家の皆様には申し訳ない(原文ママ)」と即時に率直な思いを返答しています。
日本屈指の実業家でありながら、国民の声に丁寧に答える誠実で素直な姿勢が、多くの人の心をとらえています。

アドボカシーマーケティングで大切なのは、ユーザーの消費活動を支援することです。ユーザーの利益のためなら、一時的に自社の不利益となることもやむをえないとしています。ユーザーの声に耳を傾け、商品やサービスの改善を続けていくことが長期的にはユーザーとの信頼関係を築き、大きなメリットになっていくと考えられています。

実は、日本には昔からアドボカシーマーケティングの思想が根づいています。それは、誰もが知る昔話です。登場する主人公の老夫婦(弱者)たちは皆、アドボカシーマーケティングの実践者です。彼らの多くが、か弱い動物たちを慈しみ、愛する人たちです。動物(弱者)を助けることで、何か利益を得ようともしていません。しかし、いずれそれが巡り巡って、動物(弱者)たちが老夫婦に富と幸福をもたらします。反対に、嘘をついたり、動物(弱者)を虐待したり、邪な思いを抱いたりした人たちは、皆手痛いしっぺ返しを喰らいます。

日本の昔話は、正直で透明性を維持することは、長期的には「情けは人の為ならず」として、やがて報われるという教訓を教えてくれます。アドボカシーマーケティングでは、ユーザーに対して嘘偽りのない情報を提供し、ユーザーの利益を追求します。

「無知」が無意識に嘘をつかせる

2016年、イギリスのオックスフォード英語辞書が、「post-truth(ポスト真実)」という言葉を「今年の言葉」に選びました。post-truth age(ポスト真実の時代)といったように、形容詞として用いられます。これは、精査された正確性の高い情報よりも、SNSのように短くて感情に訴えかける情報のほうが、世論を強く動かしていく世の中の流れを指しています。

SNSを通じた情報の流通・拡散するスピードが、マスメディアの発信より早くなり、あっという間に虚偽の情報が錯綜することが増えました。そんな社会において、情報が真実か嘘かを検証するより先に、インパクトがあるか、共感できるかという価値観が世論を形成する傾向が強くなっています。

愉快犯的に、意図的に流されるフェイクニュースもさることながら、意外と多いのが、発信者が良かれと思いながらも、無知による誤情報を拡散してしまうことです。特に、新型コロナウイルスで不安が覆う社会状況では、ちょっとした小さな偽情報が人々を混乱に陥れます。日々、刻一刻と状況が変わっていく世の中で、ますます正しい情報を発信する必要性が高まっています。

無知による偽情報を発信するリスクが最も高いのは、ネットに氾濫する情報をソースにして、2次コンテンツを作成することです。フェイクニュースは、もっともらしい顔をして現れます。トイレットペーパーの買い占めが起きたのはフェイクニュースの典型例で、これはまさに不確かな一部の情報が検証される前に流通・拡散されて起きたパニック現象です。

正しい情報を見極める基準

こうした、無知による社会的混乱を危惧したノーベル賞学者の山中伸弥氏が、4月に嘘に惑わされないための情報の見極め方について、「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」というサイトを立ち上げました。このサイトでは、「新型コロナウイルス情報発信」の「証拠(エビデンス)の強さによる情報分類」で、情報を4種類に分類して見極める方法をアドバイスしています。

<証拠(エビデンス)の強さによる情報分類>
・証拠(エビデンス)があり、正しい可能性が高い情報
・正しい可能性があるが、さらなる証拠(エビデンス)が必要な情報
・正しいかもしれないが、さらなる証拠(エビデンス)が必要な情報
・証拠(エビデンス)の乏しい情報

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ここでは、新型コロナウイルスに関する情報の具体的な見極め方を記していますが、この視点は、ほかのあらゆる情報の真偽の見極め方のヒントになると思います。どんな情報にふれたときも、エビデンスがどこに潜んでいるのかを見極める目を養う重要性について啓蒙しています。

このような、エビデンスに則った情報検証の動きは世界的潮流となっており、GoogleFacebookもフェイクニュース対策として警告表示やアルゴリズムの変更などに動き出しています。

アメリカでは、非営利団体のPoynter Instituteが、政治にまつわる発言・声明の信憑性をファクトチェック(事実検証)するサイト「POLITIFACT」を設置し、「Truth-O-Meter」と呼ばれる6段階の評価基準を紹介しています。

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Truth-O-Meterによる6段階の評価基準>
True:正確な情報であり、特段の問題はない
Mostly True:正確な情報ではあるが、さらなる説明または追加情報の提示が必要である
Half True:部分的な情報は正確だが、重要な詳細情報が不足している、または文脈から逸脱して歪曲されている
Mostly False:若干の正確な情報を含むが、重大な事実を無視して印象操作している
False:不正確な情報である
Pants on Fire:不正確なだけでなく、馬鹿げている

また、スマートニュース株式会社がスペシャルパートナーとなっている、特定非営利活動法人ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)は、国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)が掲げる「Code of Principles(ファクトチェック綱領)」の5つの原則をもとに、ファクトチェックの普及活動を行っています。
ファクトチェック・イニシアティブのウェブサイトには、ファクトチェック綱領の日本語訳が載っています。こちらもぜひ参考にしてみてください。

<ファクトチェック綱領>
1 非党派性と公正性
2 情報源の透明性
3 財源・組織の透明性
4 方法論の透明性
5 明確で誠実な訂正

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正しい情報を見極め、正しい情報を発信することが求められている

以上、忖度、隠蔽、無知によって無意識に犯してしまいがちな嘘の三原則を紹介しました。

最近はSNSによる誹謗中傷が問題視されていますが、誹謗中傷や批判合戦の多くは事実無根の噂や憶測、思い込み、偏見、先入観によって起きています。特定の個人や組織への忖度、都合が悪いことを隠す隠蔽、そして、自分が知っている狭い世界だけで判断したり、結論づけてしまったりする無知。

コミュニケーション・ディレクター、佐藤尚之氏の著書「明日のプランニング 伝わらない時代の「伝わる」方法」によると、2010年に世界中で流れた情報は1ゼタバイト(1021乗バイト:世界中の砂浜の砂の数と同じ)を超え、2020年には40ゼタバイト、2025年頃には66ゼタバイトになるといわれているそうです。

私たちはもはや、無限に広がる砂浜をさまよう時代に生きています。無限にあふれる玉石混交の情報の砂浜で生き抜くために、私たちはエビデンスにもとづいた正しい情報を見極め、取捨選択し、正しい情報を発信していくことが求められています。
無限に広がる砂浜から根気良く探して見つけてもらう唯一の方法は、「真実」というキラリと光るダイヤモンドであり続けることなのです。

 

※参考資料:
ポスト真実”時代の企業広報~フェイクニュースの危機対応」(株式会社エス・ピー・ネットワーク)
International Fact-Checking Network fact-checkers’ code of principles

著者紹介

成田 幸久(なりた ゆきひさ)
成田 幸久(なりた ゆきひさ) コンテンツディレクター(コンテンツマーケティング戦略支援・制作支援)

AMEX会員誌「IMPRESSION」や「ワイアード」日本版、JAL機内誌「winds」などで副編集長を務めた後、眞鍋かをりなどの著名人ブログをプロデュース。ほか、「ギズモード・ジャパン」創刊ディレクター、セブン–イレブンとヤフーの共同事業メディア「月刊4B」編集長、オウンドメディアのアドバイザリー支援など、ウェブメディアの企画・運用など実績多数。著書に『愛されるWebコンテンツの作り方 』がある。

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