月間はてブ6,000超えの「Books&Apps」に聞く、SNSで広がる記事の作り方

月間はてブ6,000超えの「Books&Apps」に聞く、SNSで広がる記事の作り方

おもしろいウェブメディアは、どう作るのか? 仕事で悩む30~40代に多くのファンを持ち、心を動かす「おもしろいコンテンツ」を毎日届け続ける「Books&Apps(ブックスアンドアップス)」は、1記事1,000はてなブックマーク超え、ソーシャルシェア数千以上のヒット記事を毎月のように公開しています。

たった2人のウェブ未経験者が5年前に立ち上げたサイトは、どのように月間200万PVを超えるまで成長したのか?運営を担うティネクト株式会社の楢原一雅さんに、その秘訣を聞きました。

 

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「Books&Apps」で2018年9月に掲載された人気記事の一部を抜粋。月間25記事で計6,227はてブを獲得した(1記事平均249はてブ)。月間PV数は140万から220万。

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初めてのバズが生まれるまで

――「Books&Apps」を立ち上げたきっかけは?

現在、会社の代表をやっている安達が僕に声をかけてきたことです。「会社立ち上げようぜ。いっしょにやんない?」と。僕は、安達とだったらおもしろいなと思ったので、すぐ「やろう」って答えました。

最初にやったのが、ブログ「Books&Apps」の立ち上げです。2013年の2月かな。安達が前の会社を辞める半年前、僕が前職を辞める1年前です。

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「Books&Apps」を運営するティネクト株式会社の取締役の楢原一雅氏。広告デザイン事務所で3年、東進ハイスクールで10年勤務した後にティネクトを設立した。

 

――どうして「ブログ」だったんですか?

目的はブランディングです。情報発信をブログでやろうと。ただ、僕も安達もウェブは素人でした。それでまず、できることから始めようと、2人とも会社勤めしながら立ち上げました。

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「Books&Apps」では、楢原さんが営業とマーケティング、安達さんが編集をおもに担当。現在は2人で運営している。サイト名は「本とアプリを紹介するブログ」が由来。立ち上げ当時、アプリは「Apps(アップス)」と呼ばれていた。

――今のサイトの流入経路は?

基本的にはSNSです。今は、SNSが約4割、オーガニックが3割強、ダイレクトが約2割です。

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自然検索流入を目的として記事作成をしていないが、ビジネス系の読み物として内容が良いため、検索上位に表示されている(図は媒体資料より抜粋)。

――ソーシャルが多いですね。

SNS上でシェアされて、ブックマークやフォローしてくれるファンができて、結果的にダイレクトが増えていきました。自然検索を狙って書いている記事はひとつもないんですが、ここも結果としてじわじわ増えてきました。

――ソーシャルの流入は、どう増えていきましたか?

1日100セッションくらいまでは、サイトを見てくれるのは自分のリアルな「友人」です。「なんかやってるな」と記事を見てもらえる。記事の中に刺さるものがあるとシェアされて、少し外へ広がるんですよ。すると「友人の友人」に届く。 ただ、企業のオウンドメディアは、毎日更新できてないサイトが多いです。「友人の友人」に届くためには、毎日更新することが大切です。すると、数万PVまでは伸びます。

 

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コンテンツがSNS上で拡散されていく範囲のイメージ(図は媒体資料より抜粋)。

――「Books&Apps」では、どうでしたか?

立ち上げから1年、2013年から2014年がその期間でした。その後に「友人の友人」の外に届くことができて、ヒットする記事が出てきました。

――きっかけは、何かあったのですか?

3ヵ月ほど運用して、「友人の友人」には届く状態、1日100セッション以上、トータルの月間PV数が20,000~30,000になりました。そのときに安達が交渉して、記事を「ハフィントン・ポスト」(現「ハフポスト」)に転載させてもらうことになりました。

――転載ということは、同じコンテンツが「ハフィントン・ポスト」にも載るということですか?

そうです。「Books&Apps」に掲載したものが、あとから時間差で載る形でした。なぜやったかというと、実験ですね。「同じ記事を大手メディアに載せると、どうなるのか?」という。

――結果、どうなったんですか?

めちゃめちゃバズった記事が出ました。

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2014年1月に公開した記事を「ハフィントン・ポスト」で同年3月に転載。「採用面接で聞かれた質問が秀逸だった」は、寄稿先で話題になったことがきっかけで、「Books&Apps」でも累計50万PVを獲得した。

――同じ記事で?

はい。「Books&Apps」に載せてもバズらないけど、「ハフィントン・ポスト」に載るとバズるという記事が何本かありました。寄稿先で人気上位に入る記事もあって、転載記事がきっかけで安達は本を出しました。

その後、「Books&Apps」だけで掲載した記事がポツポツとバズるようになり、「友人の友人」のさらに外側、「同じ価値観の人」に届くようになりました。

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Books&Apps」での初バズ記事「知らないうちに、「ジャパネットたかた」がマズイことになっていた」は、2013年11月に公開後、2014年5月にSNSで突如話題となり累計34万PVを獲得。

――自前でバズるようになったんですね。

その後、2014年の年末には、流入がさらに10倍に増えました。それは、さらに外側の「他人」にも届くようになったからです。

きっかけは、Twitterでフォロワーが多い有名人にツイートしてもらったことです。1記事のセッション数が1日で数万になりました。今でもよく覚えているのが、ちょうど年末の休暇中で「なんか、すげえ流入来てんだけど…サーバー大丈夫か」って安達と話していましたね。 それから立て続けに3記事くらいバズって。サイトの月間PV数が一気に10倍以上まで増えました。

 

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前述の記事がバズった2014年5月頃から「同じ価値観の人」に届くようになり、1日100セッションが1,000セッションへと成長。さらに、2014年末頃のバズを経て「他人」に届くと、瞬間的に1日10万セッションへ増加。

――バズるようになって急激に伸びましたね。

振り返ってみると、質の高い記事を書くだけではだめだったんです。転載を半年くらい続けて、「Books&Apps」の記事がはてブなどで認知されるようになって、そこからアクセスが一気に伸びた感じです。

――当時の記事はどういう内容だったんですか?

ビジネス系のコラムが中心です。基本は、今とほとんど変わらないです。

「Books&Apps」をやりながら気付いたのは、自分が当事者として経験したことを書くのが一番ということです。一般論を書いても、世の中にはもっと良い情報があるはずで。書き手が自分で体験したことを自分の切り口で書くということが、人を集めるんです。少なくとも「Books&Apps」は、そうやってファンを作ってきました。

――実体験をアウトプットするスタンスは、今も変わらないですね。

変わってないです。僕らは、そこがコンテンツの生命線だと思っています。

 

おもしろい書き手は「ライター」じゃない

――「Books&Apps」への流入が増えて、変わったことはありますか?

「Books&Apps」を事業化して、これでめしを食っていこうと決めました。それまでは、ウェブサービスを作ったりもしていたんですよ。ただ、それよりもうまくいっているものを伸ばそうということで、ウェブサービス開発はやめました。

――流入が増えるまで1年以上も毎日書き続けるってたいへんだと思いますが、何かコツはありますか?

継続するって、めちゃくちゃ難しいですよね。でも、ビジネスとして取り組むのであれば、継続すること自体が有効な手段です。多くのオウンドメディアがうまくいかない原因は、費用対効果とかいろいろ理由をつけて継続できないからです。そこを無理矢理でも続けることです。

――続けたから、今がある?

そうです。「Books&Apps」を毎日更新することだって、理由をつけて妥協できるポイントはたくさんあります。でも、やれば勝てるという確信があったので、手を動かし続けられました。自分が根性で書くか、難しければ書ける人を探してくるでもいいです。

――今、書き手は何人いますか?

15人ほどです。事業化を決めてから書き手を探し始めました。基本的には、直接声掛けして書いてもらっています。

――声掛けする基準はありますか?

書いている記事が、おもしろいかどうかです。僕らは、おもしろい記事が読みたいだけなので。 自分たちだけで書けることには限界があります。そもそも、自分が当事者じゃないとおもしろい記事は書けないですし。だから、自分がおもしろいと思う人に書いてもらう。

――おもしろさの定義ってありますか?

…言語化はできてないですね。

ただ、ひとついえるのは、僕らが考えるおもしろい書き手って「ライター」じゃないんですよ。自分の仕事があって稼ぐ手段はあるのに、わざわざブログとかで書き続けている人。純粋に書きたくて書いている人たちです。

特に、何年も書き続けて、はてブとかでも評価されている人は、どういう文章がウケるとか、どういう情報が必要とされているとか、どういう書き方をすれば炎上しないとかを身に付けているんです。そういう人たちに書いてもらっています。

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――執筆してもらうときは、どういうルールで依頼していますか?例えば「月に何本」とか?

まったくないですね。「書けるときに原稿をください」って依頼しています。

――締め切りがないと、毎日更新できなくなりませんか?

記事数が足りないときは、安達が書いてくれます。おかげさまで、最近は更新予定が詰まっているくらいです。元々、自分たちで書いてきたので、いつまでに書いてくれないと困るっていうことはないですね。

――書くテーマについては?

テーマも完全にお任せです。「Books&Apps」はビジネス系のイメージありますが、実際には制限ないです。だから、書き手にどういうテーマでお願いしますと言ったことはないです。

――執筆の工程はどうしていますか?プロットをすり合わせるとか?

特にないですね。もらった原稿のタイトルだけ調整することが多いです。原稿の内容も、ほぼそのまま掲載しています。

――ここをこうしてくれたら、もっと…みたいなやりとりは一切ない?

ないですね。お願いしている時点で、信頼していますので。

――なるほど…すごいですね。書いてもらった記事の評価とか、数字が良くないとかって話はしないんですか?

数字はまったく気にしてないです。書いてもらって僕らが出した記事ですから、すべてこちらの責任です。PV数が取れなかったとしても、「また次お願いします」ですね。PV数を稼ぐためにやっているわけではないので。

読者がおもしろいって思えるコンテンツを載せることが「Books&Apps」の目的です。バズってくれたらうれしいですけど(笑)。

――でも、メディアを事業として運営するためには、数字が必要だったりしませんか?

そうですね。でも、僕らは「Books&Apps」で広告費を稼ごうとか、あまり考えてないですね。正直、Google AdSenseとかだと、200万PVあっても30万円くらいにしかならないです。アフィリエイトも取り組んでみましたけど、実力なくてあまりにダサい記事しか書けなかったのでやめました(笑)。

ネットで検索できない情報こそが読者に刺さる

――そうすると、収益源はどこで?

PR記事です。「こちら広報部」というコンテンツを2016年から始めて、これがうまくいっています。

――PR記事なのに、はてブが2,000を超えている記事もありますね。

読者に、おもしろいから読んでもらえている手応えがあります。はてブが2,000を超えた日本植物燃料株式会社さんの記事は、特にユニークな企業なので反応が良かったですね。記事に登場する代表の合田さんは、このコンテンツをきっかけに本を出しました。

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はてブ2,000以上、Facebookでいいねを約10,000獲得したPR記事「「アフリカの呪術師」と全面対決するため、電子マネーを導入した話。」。

――この記事、公開当時に読みました。PR記事だったんですね。おもしろかったです。

おもしろいと感じてもらうための工夫として、当事者が自分で発信すると、嫌味なく読まれるという点があります。結果だけドヤってるのはダメです。「この話、おもしろくないですか?」って差し出している感じがいいですね。広報部の場合だと、「仕事を通じてこういうおもしろい話がありました。役に立つ話がありました。どうですか?」という感じです。

――「Books&Apps」の読者にとっての「おもしろい」というのは、具体的にどういうイメージでしょうか。

そうですね。前提として、おもしろいと感じたことを書くのは必須なんですけど、「書き手がおもしろいと感じたこと」をまとめただけではダメなんですよ。

例えば、先ほどのアフリカの記事でいうと、「電子マネーで妖精を退治」という部分が爽快なんです。現地の人に店舗の運営を任せていたけど、毎日計算が合わない。理由を聞くと「妖精がお金を持っていくんだ」と言う。それで、電子マネーを導入したら、お金が減らなくなった。ファンタジー要素を、現代技術でスパッと切るところ。うちの読者に、こういう話は喜んでもらえる。逆に、ロジックがしっかりしていないと、絶対に受けないんです。

――ロジックとは、根拠が明確ということですか?

そうです。例えば、「料理はAIに作らせたほうがいい」という主張がしたい。それを自分の主観だけで話すと独りよがりになるので、書籍を引用してロジックを強化するという感じです。

自分が経験したことをそのまま話す場合は、体験の内容に責任持つのは自分なので、引用は必須ではないですけどね。

――安達さんの記事は、ドラッカーの引用が多い印象あります。

安達はドラッカーマニアなんです。だから、意図的に本からの引用を多く持ってきています。インターネットで検索しても知りえないような情報を書籍から持ってくると、読者に驚きが生まれるんですよ。すると、間違いなく読まれる記事になります。

なぜなら、ほとんどの人は本を読まないからです。ずっと「Books&Apps」の運営をやってきて気付いたことのひとつです。情報は、ネットの外から持ってくる。体験談もネット以外の情報源のひとつです。

 

「Books&Apps」流 おもしろい書き手に必要な3要素
  • 1.当事者として書ける経験を持っている
  • 2.純粋に書きたくて書き続けている
  • 3.根拠を示しながらロジカルに書ける

 

「Books&Apps」流 SNSで読まれる文章を書くコツ
  • 差し出す…結果ではなく、過程のおもしろさを伝えて読者に喜んでもらう。
  • 引用する…書籍など、インターネットの外から情報を持ってくると読者に刺さる。

 

「Books&Apps」をもっとおもしろくするのが生きる目的

――最近、取り組んでいることはありますか?

今はTwitterに力を入れています。Facebookはフォロワー数が12,000ほどで停滞していますし、はてブも以前ほどアクティブじゃない印象です。昔は、1,000はてブついたら10万から20万PVとかありましたが、今は半分以下です。その点、Twitterはまだまだ伸びしろあるかなと思っています。

――今後の展望はいかがですか?

事業としては、まだこれからです。広報部のほかに、オウンドメディアのコンテンツ制作支援サービスを始めましたが、今後は事業の中心的なサービスになりそうです。これは、外部の書き手と協力して、毎日記事を更新していくようなしくみを構築できるのが強みです。

――SEO重視でもなさそうですね。

そうですね。コンテンツありきというか、おもしろい記事を書ける書き手に依頼しています。おもしろい記事を書いてくれる人かどうかは、これまでの運営ノウハウがありますから。

――これからの「Books&Apps」のサイト運営について教えてください。

書き手を増やしていきたいです。

事業で収益化を考えるのも、「Books&Apps」におもしろいコンテンツをもっと載せたいからなんですよ。起業した意味が、安達との「おもしろいことやろう」から始まっていますから。かっこ良く言うと、「Books&Apps」をもっとおもしろくするのが生きる目的みたいなもので。そのために、馬車馬のように働いています(笑)。

 

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編集者情報

金子 光
金子 光(かねこ ひかる)
新卒で楽天グループ株式会社に入社。
営業管理として40人規模のチームをマネジメント。その後社員3人のベンチャー企業に入社し新規事業立ち上げを経験。
現在はナイルのマーケティング相談室編集長として、Webマーケティングに従事している。
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監修者情報

ナイル編集部
ナイル編集部

2007年に創業し、約15年間で累計2,000社以上の会社にマーケティング支援を行う。また、会社としても様々な本を出版しており、業界へのノウハウ浸透に貢献している。(実績・事例はこちら

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