オウンドメディアを始める前に自問自答したい「HOURS」の条件

オウンドメディアを始める前に自問自答したい「HOURS」の条件

オウンドメディアを運営するにあたって、何から始めればいいのか頭を悩ます人は多いと思います。また、どんなコンテンツを発信していくべきか、誰もが悩むことでしょう。

今回は、オウンドメディアを始めるにあたって、押さえておきたい考え方について、事例をもとに説明したいと思います。

「HOURS」の条件

これから紹介するのは、バズるコンテンツやPV(ページビュー)を稼ぐコンテンツの作り方といった小手先の施策ではなく、ユーザーと信頼関係を築くために欠かせない5つの条件です。

1:Honesty(顔が見えるか?)
2:Originality(オリジナリティがあるか?)
3:User First(ユーザーの役に立つか?)
4:Reliability(信頼性があるか?)
5:Strategy(長期的な戦略か?)

それぞれの条件の頭文字を取って「HOURS」の条件と覚えておくといいでしょう。

1:Honesty(顔が見えるか?)

「Honesty」には「正直、誠実、素顔」という意味があります。企業のオウンドメディアは、ユーザーとの信頼関係の構築が最大の目的です。そのためにはまず、コンテンツの発信者の素顔が見えることが欠かせません。

コンテンツの制作費をなるべく安く抑えることを優先し、クラウドソーシングなどで、どこにでもある二次情報を大量生産するのは愚の骨頂です。企業の商品やサービスのことをあまり理解していないライターによるコンテンツをいくら増やしても、エンゲージメントの向上にはつながりません。

例えば、創業100年以上の歴史を持つ、オフィス関連事業で有名な株式会社内田洋行。同社が運営する「UCHIDA-TV」は、動画コンテンツに特化したオウンドメディアです。スタートして6年、これまで計300本以上の動画コンテンツを配信しています。

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「UCHIDA-TV」の大きな特徴は、広報部の社員がコンテンツの企画から取材、キャスティング、撮影、配信までを、一人ですべて担当している点です。「先端技術」「ビジネス」「ライフ」「教育」という4つの切り口で、内田洋行の事業との関連性をにおわせながら、担当者の独断で「おもしろい」と思うテーマを扱っています。
オウンドメディアにありがちな、「建前」や「宣伝臭」が薄く、担当者の実直な姿勢から、同社の熱い思いや素顔が垣間見え、親近感が伝わってきます。ユーザーに自分事化してもらうことを前提に、同社の事業についても、頭の片隅に思い出してもらうような狙いがしっかり見えてきます。

内田洋行はBtoBを軸とした老舗の大企業であるゆえに、一般の人からは「会社の個の顔」が見えにくくなりがちです。その点、「UCHIDA-TV」は、企業色を打ち消しながら、視聴者が日常で接点を持ち、興味・関心を抱きそうなテーマに沿ったコンテンツを上手に溶け込ませています。視聴者との距離を縮め、信頼関係の構築に成功しているメディアだといえるのではないでしょうか。

2:Originality(オリジナリティがあるか?)

オリジナリティとは何でしょうか?コンテンツには、なぜオリジナリティが求められるのでしょうか?
あふれるインターネットの情報の中から、自分たちの商品やサービスを見つけてもらうためには、オリジナリティを打ち出すことが必要不可欠になっています。
ユーザーが「何か」を漠然と探すのではなく、理由があって「これがいい」と選択しなければ、ファンになってもらうことは困難です。行き当たりばったりでユーザーを獲得しにいって消耗戦を続けるのではなく、一人ひとりのユーザーと効率良く絆を深めていくためには、オリジナリティが必要なのです。

では、オリジナリティを打ち出すには、どうすればいいのでしょうか。

「うちにはそんなオリジナルな商品なんてないから無理」と悩む企業も多いかもしれません。しかし、真にオリジナルのものなんて、簡単には作れません。ですので、コンテンツ自体は完全にオリジナルではないものの、過去にあったトピックを、異なった視点で再提示していけばいいのです。
コンテンツ制作におけるオリジナリティとは、企業が提供する商品やサービスの着眼点を少し変えて、差別化を図ることです。ちょっと視点を変え、意外な組み合わせをするだけでいいのです。過去にあったものの、新しい切り口、考え方、比較分析など、新鮮な提案がされていれば、十分オリジナリティのあるコンテンツを発信してくことが可能です。また、扱う商品・サービスと、今流行っている事象を組み合わせるのも有効な手法です。

例えば、コクヨ株式会社が運営するオウンドメディア「WORKSIGHT」は、オフィス家具という枠を越え、「働く環境」をテーマにしています。企業が抱えるビジネスの課題を解決するというコンセプトのもと、働く環境を考えることによって、世界の先進的なオフィス事例や次世代のワークスタイルを紹介しています。

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「WORKSIGHT」の編集長は、コンテンツの制作にあたって、「足を使う」ことを信条にしています。つまり、みずからの足で直接取材し、みずからの目で見た情報を調査・整理して、価値の高いオリジナルコンテンツを発信しているのです。それは同時に、ノウハウを蓄積し、業界のトップランナーとしてのブランディングに貢献しているといっていいでしょう。

詳細についてさらに知りたい人は、取材記事「足を運んで自分のフィルターを通さないと、付加価値の高いコンテンツは生まれない」をご一読ください。

3:User First(顧客の役に立つか?)

ユーザーの消費活動を支援するマーケティングのことを、「アドボカシーマーケティング」といいます。
「アドボカシー(advocacy)」とは、「支援」「擁護」「代弁」などの意味を持ちます。アドボカシーマーケティングは、ユーザーとの信頼関係を築くことを目的に、徹底的にユーザーファーストで接するマーケティング手法のことです。

ユーザーの利益のためなら、自社の不利益となる「競合他社を推薦」することも、一時的にはやむをえないとしています。ユーザーの声に耳を傾け、商品やサービスの改善を続けていくことで、企業の成長を目指します。そして、長期的にはユーザーとの信頼関係を築くことが、企業にとって大きなメリットになっていくと考えられています。

インターネットやソーシャルメディアの普及によって、情報の取捨選択や口コミ評価が可能となったため、企業は本当の意味で「顧客第一主義」を掲げなければ生き残れなくなりました。顧客からの信頼を得ることで長期的な関係性を構築し、利益を目指さなければならなくなったのです。「情けは人のためならず」なのです。

例えば、日本ハム株式会社が運営する「BBQ GO! 」は、国内最大級のバーベキュー情報専門のメディアです。1年半でオウンドメディアとしてはトップクラスの800万PVを達成。オウンドメディアの成功例といえます。

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全国のバーベキュースポット検索から、バーベキューの「準備」「食材・材料」「道具・用品」「レシピ」などのお役立ち情報が満載。バーベキューの食材として、日本ハムの商品も少し紹介されていますが、宣伝臭はまったくありません。あくまでも、バーベキューを楽しむためのユーザー視点のコンテンツ紹介に徹底しています。

4:Reliability(信頼性があるか?)

企業はユーザーとの約束を守り、信頼を得なければなりません。信頼関係を構築する上でもアドボカシーマーケティングの思想は不可欠です。情報商材やコンプレックス系商品にありがちな、目先の利益だけのためにユーザーの利益を損ねることは論外です。信頼は、長期的な利益や投資対効果と重要な相関関係があります。アドボカシーマーケティングでは、「信頼」や「ロイヤルティ」(忠誠心)という長期的な指標を用いることで、継続的な利益の最大化を狙います。

例えば、第一三共ヘルスケア株式会社が運営するオウンドメディア「おれカラ」は、医薬品という表現の制約が非常にきびしい業界にあって、積極的にエンターテインメント性の高いコンテンツ制作に取り組んでいます。

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健康に関する著名人インタビュー「賢者の仕事、賢者の健康」、ドランクドラゴンの鈴木拓氏や映像作家の森翔太氏を連載陣として起用するなど、本数は少ないながらも、コストと手間をかけていることが推察されます。ほとんどの記事が企画から公開まで1ヵ月程度をかけ、調査レポートの「カラダすべて白書」は、2ヵ月かけているとのこと。更新回数に縛られず、1本1本を丁寧に制作しています。

医薬品を扱う第一三共ヘルスケアは、基本的にユーザーが病気になったときにしか接点が生まれません。そういう意味では、あらかじめ潜在層にいかにリーチして信頼を獲得していくかがアドボカシーマーケティング成功のカギを握ります。

以前、株式会社ディー・エヌ・エーが運営する医療関連のメディア「WELQ」が、記事の粗製濫造でPVを荒稼ぎし、問題になりました。しかし、企業が運営するオウンドメディアは、信頼なくして成り立ちません。特に医療情報は、人間の命に関わる非常にセンシティブなコンテンツです。

そういう意味で第一三共ヘルスケアは、医薬品を扱いながらも、「おれカラ」で医薬品に頼らないように、普段から健康管理を意識することを啓蒙しています。これはまさに、ユーザーファーストの考え方です。医薬品メーカーとしての信頼を獲得するための課題解決型コンテンツを丁寧に作り、同時にエンターテインメントを実現した、希有なオウンドメディアといってもいいでしょう。

5:Strategy(長期的な戦略か?)

息切れしないで長期的に走り続けるためには、ゼロから新規顧客を開拓するだけでなく、見込み顧客を集め、優良顧客に育成していく戦略が必要です。そうすれば、長期的な顧客との信頼関係を築きやすくなるからです。長期的戦略のないプロジェクトにゴールは見いだせません。

ゆえにオウンドメディアでは、長期的戦略に立って、見込み顧客や顧客の購入意欲を喚起するよう、情報設計を行います。最適なコミュニケーションを続けることで優良顧客を育み、継続的な信頼関係を結ぶことが、長期的かつ安定した売上の向上につながります。そしてコンテンツは、意図と目的をもって計画的に配分を考え、設計する必要があるのです。

例えば、花王株式会社が運営するオウンドメディア「マイカジ」は、家事に関する基本情報が、悩み別やカテゴリー別で検索できるサイト構成になっています。

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子育てや家事に関するコンテンツが多数掲載されており、主婦層を中心としたユーザー層の共感を集め、悩みの解消に役立つメディアとなっています。

花王が扱う商品は、いわゆる消費者の思考が購買にあまり関与しない「低関与商材」です。つまり、性能や品質の差別化が難しく、消費者が何を選んでも違いがないと考えられる商品です。低関与商材を購入する際、消費者はあまり考えずに、よく知っているブランドや商品、値段を判断基準にします。そして、なんとなく同じ商品を買い続ける傾向があるといわれます。

それゆえ、家事に関する膨大な課題解決型コンテンツを提供することで、長期的にユーザーの継続的な訪問を促し、同時に具体的な解決策となる商品を提示しています。

そのような低関与商材を扱うため、ユーザーの日常に根ざしたお役立ち情報を提供することで、見込み顧客を集め、優良顧客に育成しているのです。

ユーザーと長期的な信頼関係を築くオウンドメディアに

以上、オウンドメディアを始めるにあたって、自問自答すべき5つの条件「HOURS」についてご紹介しました。
オウンドメディアは商業メディアと違って、広告収入を目的としたメディアではありません。ですから、むやみにPVを追いかけたり、バズったことに一喜一憂したりすることに意味はありません。オウンドメディアでは、どうしたらユーザーと長期的な信頼関係を築くことができるかを考えることが最も大切なのです。

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著者紹介

成田 幸久(なりた ゆきひさ)
成田 幸久(なりた ゆきひさ) コンテンツディレクター(コンテンツマーケティング戦略支援・制作支援)

AMEX会員誌「IMPRESSION」や「ワイアード」日本版、JAL機内誌「winds」などで副編集長を務めた後、眞鍋かをりなどの著名人ブログをプロデュース。ほか、「ギズモード・ジャパン」創刊ディレクター、セブン–イレブンとヤフーの共同事業メディア「月刊4B」編集長、オウンドメディアのアドバイザリー支援など、ウェブメディアの企画・運用など実績多数。著書に『愛されるWebコンテンツの作り方 』がある。

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