「じゃあ、やってみよう」ほぼ日のイベントで“共通意識のある場”がうまれた理由

「じゃあ、やってみよう」ほぼ日のイベントで“共通意識のある場”がうまれた理由

「ほぼ日(ほぼにち)」の愛称で知られるウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」は、代表の糸井重里さんが19986月に立ち上げてから約20年、毎日更新を続けています。

2017年には、株式会社ほぼ日として上場。そして、「生活のたのしみ展」というイベントを3月と11月に開催しました。第2回となる11月は、5日間で約15万人(推定)が六本木ヒルズの会場を訪れています。

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1回の20店舗から、第2回は59店舗に拡大して開催。入場無料。

 

連載「愛のないコンテンツマーケティングに未来はない。」第15回は、大盛況のイベントで全体運営と進行を担った「ほぼ日」の杉山摩美さんと、広報の冨田裕乃さんに、開催までの道のりについてお話を伺います。

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「ほぼ日刊イトイ新聞」の看板商品である「ほぼ日手帳」は、LOFTの手帳部門で13年連続1位の販売数。

 

なお、この記事は下記のような方にぜひ読んでいただきたい内容となっています。

・イベント開催で得られる成果と、そのプロセスを知りたい。

・ほぼ日ならではの場づくり、コンテンツ企画の考え方を学びたい。

 

それでは、最後までお付き合いください。

 

 

「生活のたのしみ展」は、お買い物のフェスのような賑わいのある場にしたかった

 

――今日はよろしくお願いします。11月のイベントは前回以上に盛況でしたね。

 

杉山:ありがとうございます。会場の広さも倍以上でしたしね。

 

――今回は、ほぼ日さんの運営の段取りやしくみを学びたいと思って来ました。

 

杉山:そんなにうまく段取れていなかったですけどね。参考になればと思います。よろしくお願いします。

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「生活のたのしみ展」の全体運営を担当した杉山さん。

 

――では、「生活のたのしみ展」を開催することになった背景から教えてください。

 

冨田:最初は、「自分たちがやっていることも含めて雑貨の見本市みたいなことができないだろうか」と糸井が言い出したのがきっかけでした。ただ、やりたいことは「雑貨」の範囲を大幅に越えていたので、「生活のたのしみ」というキーワードが出てきて、一気に企画が広がりました。

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広報をおもに担当する冨田さん。

 

――扱う商品が、生活に関係ある物ばかりですものね。

 

杉山:あと「展」という表現も大切で。お買い物のフェスのような、出展者の方もお客様も私たちスタッフも「参加者」である、というのが「生活のたのしみ展」の特長です。

そして、出展者さん同士がお互いをリスペクトされていて、「次は、いっしょにこういうことをしたいね」などと、アイディアが生まれる場になりつつあることが、私たちも予期していなかったうれしいことでした。

 

――2014年に実店舗として「TOBICHI(とびち)」を始めたことも関係ありますか?

 

冨田:はい。「TOBICHI」でやってきた企画から、さらに発展した企画もあります。

TOBICHIだけでなく、「ほぼ日刊イトイ新聞」の読み物、商品、イベントでごいっしょしたさまざまな企画から生まれたのが「生活のたのしみ展」です。

ただ、このイベントならではの企画にしようと改めて考えたことがたくさんありました。

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――なるほど。そういった、ほぼ日の取組みがイベントに活きているのですね。ただ、「生活のたのしみ展」開催の5日間は社員がほぼ総動員で対応していたと思いますが、それは効率が悪いといった話になりませんか?

 

冨田:一見、効率が良くないと見えるかもしれません。

しかし、それ以上に乗組員(※)が新しく生み出せたものや企画ができたことだったり、お客様の表情や、会話、何を手に取っているのかということにふれることができたり…。そういうとてつもない経験を足し算していくと、数字以上に価値のある時間だと思っています。

 

※ほぼ日ではスタッフを「乗組員」と呼びます。

 

 

「じゃあ、やってみよう」を広げるしくみ

 

――イベントでは、初日と最終日でお客さんの動線や通路の案内が変わった印象でした。改善を促すしくみのようなものがあったのですか?

 

杉山スプレッドシートを乗組員全員で共有して、会期中にどんどん問題点と改善したことを書き込むようにしました。ただ指摘するだけならいくらでもできるので、必ずどうしたら良いか、考えたことまで書いてもらうようにしています。

そうすると、「じゃあ、やってみよう」とそのアイディアを試す別の乗組員が出てきて、「やってみたらこうだった」と情報を上書きしていきました。

 

――1回目からそのしくみだったんですか?

 

杉山:いえ。1回目はイベントが終わった後で振り返りの機会を作ったら、けっこう忘れてしまったんです。

2回目はバタバタしながら開催初日を迎えたんですけど、「そうだ!これは、今やらなきゃダメなやつだ!」と。

 

冨田:初日の夜にシート作っていましたね。

 

杉山:スマホでも書き込めますので、緊迫感のある走り書きのようなメモとかもあって。

 

冨田:今は、それがすごく財産になっていると思います。

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――その経験や情報の積み重ねって、ものすごい数のPDCAを回しているようなことですよね。

 

冨田:そうですね。マーケティング的なことは意識していないのですが、それぞれが感じたこと、考えたことを試して、共有して、修正して、ということをやっている感じでしょうか。

 

杉山:最初にプランというか、ゴールを設定して向かっていく進め方だと、そこを超えられない感じになると思ってて。だから、ほぼ日では、まずやって、失敗したら改善して、うまくいったら共有を繰り返しているうちに、「想定していた以上のこともできた」ということを大事にしています。

 

――PDCAというよりも、トライ・アンド・エラーなんですね。

 

杉山:もちろん、事前に準備や話し合いは入念に、山ほどします。でも、ダメだったら切り替える必要があります。その瞬発力は、第1回を経験した乗組員全員が持っている部分ですね。

イベントでは、どうしてもその場で判断して、連携しながら対応する必要が出てきますので。

 

冨田:「生活のたのしみ展」で感動したのが、乗組員だけじゃなく、ほぼ日で募集したアルバイトの方たちも、5日間で連携できていったことです。

 

杉山:「アルバイトの方たちがすごかったね」というのは、乗組員全員の感想です。乗組員と同じ目線で「生活のたのしみ展を、もっとこうしたら楽しんでもらえるんじゃないか」と考えてくれました。この経験が、第2回の一番の収穫です。

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――会場の雰囲気は単なる「販売イベント」ではなく、お客さんはもちろん運営スタッフも楽しんでいるというか、良い表情の方が多い印象でした。

 

杉山:「生活のたのしみ展」では、お客様はもちろん、私たちもアルバイトさんも出展者さんも、この「お祭り」をどう楽しめるか、良くしていけるかという、独特の共通意識を持てていたと思っています。

特に出展者さんは、前回はレジ対応や接客以外の時間が多くなりがちだったので、お客様と話をする時間を多くしたいと考えていました。

 

冨田:出展者さんは普段、店頭に立つ機会がそれほど多くない作家さんやスタイリストさんが中心です。

「生活のたのしみ展」だと、隣のブースに来たお客様がフラッと寄って、出展者さんと話をして作品を好きになってもらえるといった出会いがたくさんありました。その接客に集中できるよう、改善できたのは良かったと思います。

 

杉山:出展者さんからは「楽しかった」と感想を多くもらえました。

売れたかどうかということ以上に、「じゃあ、次はどうしようか」というアイディアが生まれる場にできたのは良かったと思います。

 

――トライ・アンド・エラーを積み重ねた成果ですね。

 

杉山:特に最終日はお客様が多かったのですが、レジの混雑や行列が比較的解消されて、なんとか気持ち良く楽しんでもらえただろうなと思っています。そういう場を作れたのが、私としてはすごく良かったです。

 

――具体的には、どうやったのですか?

 

杉山:根本的には、レジシステムの見直しと改善です。開催中にもどんどん改善して、精度を上げていきました。

その次に、案内のオペレーションやスタッフの連携を整えて、さらに待っている時間が苦痛にならないように会場内で心が和む音楽を流すとか、案内は丁寧に笑顔でするとか…。初めから全部できていれば良かったのですが、現場で気付いたことを即座に対応していきました。

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「思いを持って一生懸命やれるかどうか」が一番大事

 

――お話を伺っていると、ほぼ日の「じゃあ、やってみよう」というチャレンジを許容する社風があるからできているという印象もありますが、いかがでしょうか?

 

冨田:たぶん、ほぼ日でしかできないことってほとんどないと思います。

誰でも一生懸命に思いを持って取り組むと、こういう形になるんじゃないかと。ただ、その「一生懸命に思いを持ってやれるかどうか」っていうのが、実は一番大事で。

ほぼ日では、そこまでの企画にできるか、というところに時間をかけます。

 

――なるほど。

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「生活のたのしみ展」で、新商品「ほぼ日のアースボール」の実演販売をする糸井重里さん。

 

冨田:あと、関わる人が「どうやったらがんばれるか、楽しくいられるか」という環境を考えることについては、糸井からいろいろと学んでいます。

 

糸井が良く言うのは「魚を飼うってことは、水槽を飼うってことだ」と。

魚が元気でいられるためには、魚自体を見続けるんじゃなくて、その魚が暮らす水槽の環境をどういう風に整えるか見ることが大事だっていうんです。

 

糸井は社長として、乗組員が本当に楽しく働けるためにどういう環境を作るかっていうことをすごく考えています。私たちはその環境をもらっている以上、しっかり働こうと思います。

なので、アルバイトとして参加してくれた方たちにも、「生活のたのしみ展」を私たちと同じように楽しんでもらって、その上でお客様や出展者さんが楽しめる環境をどうやって作ったらいいかっていっしょに考えてもらいたいなって。そのための準備も入念にしました。

例えば、スタッフのお弁当はとっても大事です!

 

杉山:絶対大事(笑)。お弁当は選んでもらえるようにしました。

あと、ユニフォームのつなぎは、乗組員もアルバイトもみんないっしょとか。

 

冨田:最初の面接で、「どの仕事だったら一生懸命に楽しくやってもらえるか」を聞くとか。

 

杉山:たぶん、そういうことの積み重ねなんだと思いますね。

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――大事なことですね。ただ、わかっていても企業では効率を考えてなかなかできないというか…。

 

冨田:それはもう、覚悟ですね。本当に。

 

 

自分がお客様だったらどう反応するかをずっと考える

 

――最後に、お二人にとって「コンテンツマーケティング」はどういうものですか?

 

冨田:「コンテンツマーケティング」という言葉を使ったことがないので、ちょっとうまく説明できないです。

ただ、コンテンツとマーケティングと分けて考えれば、コンテンツによって「場を作る」というのは、私たちが日頃からやっていることです。

 

糸井はよく、ウェブサイトの読み物も、商品も、イベントも、「全部コンテンツだ」と言っています。

どういうコンテンツで、皆さんにその「場」を楽しんでもらえるかということを考えることが、近いのかなって思います。本当に、しいて言えばなんですけど。

 

杉山:あと、ほぼ日の乗組員って、自分たちがすごく「お客さん」でもあるんですね。売る側でありつつ、買う側でもあるっていう。

 

冨田:確かに。社内のお買い物率すごく高いと思います。

 

杉山:自分がお客様だったらどう反応するかみたいなところを、ずっと考えています。マニュアル的な対応をされたらうれしくないなとか、いかにも売ってやろうという商品は欲しくないだろうとか。

そういう、自分がお客様として買いたいと思える商品や場、時間を作ろうと、素直に真摯に取り組んでいるんだと思います。

 

――買う側の視点をすごく大事にしていますよね。コンテンツマーケティングで情報を発信していくときに見落とされがちなのは、そういった顧客視点なのだと思います。

ちなみに、イベントは次回の開催予定ありますか?

 

杉山:第3回「生活のたのしみ展」を、2018年6月7日(木)〜11日(月)に恵比寿ガーデンプレイスで開催します。運営もより細やかに、そしてパワーアップできるようにがんばっていきますね。

 

――楽しみですね。今回はありがとうございました!

Editor's EYE

実は私、アルバイトスタッフとして「生活のたのしみ展」に参加していました。

ほぼ日さん独特のイベントの空気が、どういう方法や考え方で作られているのか知りたかったからです。ただ、参加してわかったのは予想以上にユニークなしくみと考え方だったので、インタビュー取材のお願いをしたのでした。

お客さんのことを考えるのはもちろん、イベントをいっしょに運営する出展者さんやアルバイトスタッフの「環境」まで、相手の立場で考えて入念に準備する。だからこそ、ほぼ日のつくる「コンテンツ」は独特な吸引力を持っているのかもしれません。

 

なお、今回で連載「愛のないコンテンツマーケティングに未来はない。」はひとまず終了となります。数字ばかりを追うのではなく、さまざまな愛情あふれるコンテンツマーケティングのかたちをお届けできたと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

また、新企画でお会いしましょう。

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