ファンが新しい顧客を連れてくる 6年で売上4倍と躍進したヤッホーブルーイングの熱狂イベント運営術

ファンが新しい顧客を連れてくる 6年で売上4倍と躍進したヤッホーブルーイングの熱狂イベント運営術

クラフトビール「よなよなエール」で知られる株式会社ヤッホーブルーイングは、大手メーカーがシェア99%を占める日本のビール業界で独自の存在感を放っています。

売上は、6年間で4倍以上に拡大。さらに13年連続増収増益(見込み)と、躍進を続けています。201710月には明治神宮外苑軟式球場を会場に、4,000人のファンとビールを楽しむイベント「よなよなエールの超宴(ちょううたげ)」(以下、超宴)を開催し、盛況をおさめました。

さらに、躍進を支えたファンイベントで「2020年に全国ドームツアー」という大きな目標を立てています。

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連載「愛のないコンテンツマーケティングに未来はない」第14回は、リアルなイベントコンテンツを軸にファンを増やし続けるヤッホーブルーイングの佐藤潤さんと飯野真梨子さんに、ユーザーとのエンゲージメントを高める施策の運営方法について話を聞きました。

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左からよなよなエールFUN×FAN団(プロモーションチーム)責任者の佐藤さんと、よなよなエール広め隊(広報チーム)の飯野さん。

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企業サイトのほか、EC本店楽天市場店の2サイトで展開。ECサイトのアクセス数は月間数十万UU規模。

 

今回のインタビューは、下記のような悩みを持つ方に最適です。

Webコンテンツの施策効果に行き詰まりを感じている方

SNSから踏み込んだユーザーとのコミュニケーション構築を検討している方

・顧客視点のマーケティング戦略を模索している方

それでは、最後までお付き合いください。

 

イベントを通じて見えてきた「よなよなエールの本当のベネフィット」

 

――10月に明治神宮外苑軟式球場で行われた「超宴」は、大盛況でしたね。

 

佐藤:ありがとうございます。おかげさまで、4,000名という多くのお客様にきていただくことができました。アンケートでは概ね高い評価をいただくことができましたが、初めての大規模イベントということもあって、反省点も多くありました。次回に活かしたいと思います。

 

――参加者は、どういった方々だったのでしょう?

 

佐藤:4,000名のお客様は、自社メディアをフォローしてくださっている方々が中心です。ECサイトのメールマガジン、FacebookInstagramTwitterのフォロワー、公式ビアレストランの「YONA YONA BEER WORKS」のお客様など、普段からつながりのある方々です。

申込の平均人数が3名前後なので、1,0001,500名の熱狂的なお客様が23名のご家族やご友人を連れてきていただいたような想定です。

 

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――年齢や性別はいかがですか?

 

佐藤:「よなよなエール」という製品のメインターゲットは、40歳前後の男性です。ただ、「超宴」のイベント参加者は、男女比が55、平均年齢も38歳くらいでした。都心でのイベントということで、女性や若い年齢層の方々にも多く参加いただくことができたようです。

 

――「超宴」というイベントは最初、軽井沢で開催されたのですね?

 

佐藤:「ヤッホーブルーイング」の本社は軽井沢にありまして、最初は北軽井沢のキャンプ場で開催しました。2015年の5月に500人のお客様に来ていただいて。以来、2016年・2017年と1,000人に規模を拡大して行ったのですが、2017年は発売15分でチケットがほぼ完売してしまいました。

そういった手応えもあって、2017年の10月に4,000人規模のイベントを開催することができました。

 

――たいへんな人気ですね。しかし、なぜ「超宴」のようなイベントを開催するようになったのですか?

 

佐藤:最初は、熱狂的に「よなよなエール」を支持いただいているお客様に、ヤッホーブルーイングのビールはどういう価値を提供できてるんだろう?という「ベネフィット」を教えてもらって、それを製品や販売に活かそうというところから始まりました。

すると、製品を通じた新しい仲間との出会いや、「日本のビール市場を盛り上げたい」という私たちの企業理念に対する共感といったベネフィットをお客様に提供できていることが、インタビュー結果から見えてきました。 

そこで、熱狂的に支持いただいているお客様とのつながりをもっと大切にしたいということで、2010年から「宴(うたげ)」という4080人規模のファンイベントを開催してきました。

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ファンイベント「宴」の様子。佐藤さん(写真右下)もマイクを手に、率先して盛り上げる。

 

佐藤:2013年から東京・赤坂で「YONA YONA BEER WORKS*」という公式ビアレストランがオープンし、定期的にイベントができるようになってくると、チケットが発売と同時に完売するようになってきました。熱狂的なお客様がリピーターとなり、ご家族やご友人の方と一緒に参加してくださるのです。

そこで、規模を大きくしてもっと多くのお客様に会いたいねということで始まったのが2015年の「超宴」でした。

 *開店当時の店名は「よなよなビアキッチン」

 

――おふたりは、数十人規模の「宴」のイベントに初めて参加されたとき、どういった印象でしたか?

 

佐藤:すごい感動しました。お客様が温かくて、「がんばってね」とか「手伝うよ」と応援してくれるんですよ。お客様同士が率先して盛り上げる雰囲気を作ってくれて。この会社に入ってよかった!って実感しました。

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飯野:私は佐藤ほどファンイベントのことを知らなかったので、最初はビックリしました。熱気がすごいんです。会場の。ビールを飲んで語らうイベントと考えていたら、原材料当てクイズとか全員総立ちで盛り上がるみたいな。その一体感には、本当に驚きましたし、感動しました。

 

佐藤:「よなよなエールが好き」という気持ちはお客様も会社のメンバーも同じですから、一体感が生まれやすいのかもしれません。

あと、うちの会社はメンバーをニックネームで呼び合う文化があり、イベントのときはお客様ともニックネームで呼び合います。何度も参加されている熱狂的なお客様は自然と覚えるので、我々スタッフの頭の中には、お名前と、お客様とのエピソードがたくさん詰まっています。そうやって、熱狂的なお客様とのつながりを深めてきました。

 

顧客が「熱狂的なお客様」になるために必要なものは?

 

――ファンイベントを定期的に開催するのは、大変じゃないですか?

 

飯野:「宴」を始めた2010年ごろは、社員が20人くらいだったので大変だったと聞いています。

ただ、最初は半信半疑だったスタッフも、社長の井手も、イベントで予想以上によろこんでくれるお客様を目の当たりにして、「これは間違いない」という手応えを感じたようです。その感動体験がイベントを続ける推進力になったのだと思います。

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佐藤:イベントは継続的に開催し、数年かけてブランドへの信頼度をあげていくものと考えていますので、短期的にリターンを求めると継続は難しいでしょうね。社内では、イベントの報告で「収支はどうだ」「赤字じゃダメだ」とか、そういう話はしません。

もちろん、長期的な種まきの施策だけではなく、短期的な売上をつくっていく施策も必要です。そのバランスをうまくとりながらイベントを続けられたことが、今につながってると思います。

あと、私たちはお客様の気持ちを「試しに買ってみようか」から「本当に好き」まで、5段階のステップがあると考えています。

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佐藤:1つ大きいのが、弊社のミッション「ビールに味を!人生に幸せを!」に共感を持ってくれるお客様が、「よし、ヤッホーブルーイングと一緒にビール市場を盛り上げようじゃないか!」と、“ロイヤルカスタマー”や“伝道師”になってくださることだと考えています。

よなよなエールという製品よりも、私たちの「日本のビール市場を楽しくしたい!」という想いに共鳴してくれた“仲間” “同志”といえる存在です。

 

日本で一番熱狂的なお客様に支持されるメーカーになりたい

 

――ファンイベントをうまく運営するためのコツはありますか?

 

佐藤:毎回アンケートを取るようにしています。

どんなコンテンツが良かったのか?料理なのか?ビールなのか?クイズなのか?お客様やスタッフとの交流なのか?ハードとソフトの両方について必ずデータを取ります。あとは、お客様の声を参考に運営しているので、実はそれほど珍しいことをしてるわけではありません。

イベントの満足度は、非常に満足>満足>やや満足>普通‥という7段階で評価してもらってます。そこで、最高評価である「非常に満足」の向上を追い求めています。

なぜなら、「非常に満足」と「満足」の間には大きな差があるからです。お客様の期待値を大きく超えないと「非常に満足」という評価はいただけません。「満足」は期待したとおりのおいしいビールと料理が食べられた。つまり、「普通」と評価いただいていると考えています。

私たちは、熱狂的なお客様の熱量が外へ拡がっていき、新しい方をつれてきてくださるという仮説を持って、イベントを運営しています。ですので、「非常に満足」と評価いただくことに対して、徹底的にこだわっています

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――そのほかに、どのようなKPIをイベントで設定していますか?

 

佐藤:KPIは、正直まだお話できる内容ではありません。ただ、よなよなエールの全国飲用者数や飲用頻度、熱狂的なお客様の人数などを洗い出して、さらにイベントの満足度や、製品のNPS*といった指標を組み合わせて分析すると、明確にイベントの効果を捉えることができます。

イベントは、「宴」や「超宴」以外にも、年間で3,000人が来ていただく「醸造所見学ツアー」や、これから準備していきたい企画もあり、それらの役割を組み合わせて「非常に満足」をたくさんいただけるしくみにしたいです。

熱狂的なお客様を増やし、深くつながることができれば、将来5,000人や1万人規模のイベント開催も夢ではないと思っています。お客様と一緒に日本のビール市場を盛り上げ「日本で一番熱狂的なお客様に支持されているメーカー」になりたいと思っています。

 

*Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)

 

「おいしいよ!飲んでみて!」と言ってくれるお客様を裏切らない

 

――「日本で一番」を目指すにあたって、具体的な目標はありますか?

 

佐藤:2020年から、よなよなエールの超宴ドームツアーを開始する」という大きな目標があります。ドームは数万人規模の集客が必要ですが、今回の超宴で4,000人のお客様に来ていただけたことは、ドームツアーに向けての大きな第一歩となりました。

 

飯野:ヤッホーには引き算で物事を進めるという企業文化があります。「2020年にドームツアーをする」という一見すると無謀な目標を先に決め、その目標を見すえてイベントやマーケ施策を企画します。

限られた人的リソースで数万人規模のイベントを実施するためには、2020年の前年にどれくらい、その前年にはどのくらい‥といった逆算をして、その中間目標に見合うならやろうという方針で施策の選択と集中を行います。

 

佐藤:2018年の超宴も開催は決まっています。ただ、時期と場所は未定です。2018年の春までには発表したいと思っています。

そして、2018年は「満足度」を徹底的にこだわりたいと思っています。先程お話した「非常に満足」の評価です。この結果が得られれば、2019年は数万人規模のイベントに成長でき、2020年の目標実現に近づくと考えています。その目標の先に、「日本で1番」があると思っています。

 

――最後に、あなたにとって「コンテンツマーケティング」とは何ですか?

 

佐藤:「コンテンツマーケティング」「ファンマーケティング」と言われたりしますが、あまり良くわかってなくて。僕、うまく説明できないですし(笑)。

ただ、私たちがお客様に対して感じているのは、ヤッホーブルーイングを支え、我々スタッフのやる気を引き上げてくださる「源」であり、ヤッホーのビールで一緒に市場を創っていく「同志」みたいな存在ということです。

熱狂的なお客様は、今日も日本のどこかで「よなよなエールっておいしいよ!飲んでみてよ!」と言ってくださっていると思います。そのような推奨活動をしてくださっている熱狂的なお客様の期待を裏切らないよう、我々も品質・サービスをいっそう高めて、バラエティに富んだビール市場を創りたいと考えています。

 

出典・参考

「よなよなエールがお世話になります」井手直行 著

「次世代共創マーケティング」池田紀行・山崎晴生 著

「顧客視点の企業戦略」藤崎実・徳力基彦 著

 

Editor's EYE

取材中、佐藤さんと飯野さんは楽しげに「熱狂的なお客様」について語ってくれました。

イベントで率先して社員を手伝ってくれたり、参加者同士が打ち解けられるよう話しかけてくれたりする「同志」の名前が、次から次へと登場します。

本当に、ファンのことが大好きなんだなと感じました。

ファンマーケティングは「“顧客を創造する顧客”の創造」とも言われます。

それを自然なかたちで実現しているヤッホーブルーイングの取り組みを参考に、改めて自社の「価値」について考えみてはいかがでしょうか。

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著者紹介

寺田 祐也(てらだ ゆうや)
寺田 祐也(てらだ ゆうや) コンテンツプランナー(コンテンツマーケティング戦略支援・制作支援)

出版社・編集プロダクションにおいて10年以上、雑誌や広告の編集に関わる。ナイルでは2013年からコンテンツマーケティング領域で、インタビュー取材からメディアの戦略設計、データ分析と連携したコンテンツ改善など幅広く対応。5年間で数百のクライアントに対して制作・提案を担当した。

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