ファンを育成する「課題解決・バイラル・オフ会」の三位一体

ファンを育成する「課題解決・バイラル・オフ会」の三位一体

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株式会社KDDIウェブコミュニケーションズ/コミュニケーション本部 エバンジェリスト 阿部正幸さん

 

連載「愛のないコンテンツマーケティングに未来はない」第11回は、レンタルサーバーを提供するKDDIウェブコミュニケーションズの阿部正幸さんにお話をうかがった。

同社は「沈黙のWebマーケティング」や「沈黙のWebライティング」の連載で知られるホスティングブランド「CPI」を運営する。今回はエバンジェリスト(伝道師)の肩書でレンタルサーバーの普及活動をする阿部正幸さんにお話を伺った。どんな思いでメディア運用に取り組んでいるのか。その運営方針とこだわりについて語ってもらった。

「沈黙シリーズ」はドメインパワーを上げるため

――「CPI」とはなんですか。

CPI」はもともとKDDIウェブコミュニケーションズの前身の社名でした。今はKDDIウェブコミュニケーションズが運営するホスティングブランドの位置づけで、ホスティングサービスを販売しています。「https://cpi.ad.jp」はCPIのプロダクトサイトです。

CPI

 

――プロダクトサイトのわりに、商品訴求以外のコンテンツが多くのあると思いますが、コンテンツマーケティング施策と捉えてよいでしょうか。

そうですね。コンテンツ施策で行った「沈黙のWebマーケティング」や、「沈黙のWebライティング」は、サーバーの販促というよりは、ドメインパワーを上げるために行った施策です。ここからサーバー契約へのコンバージョンは特に考えていません。

――「沈黙のWebマーケティング」や「沈黙のWebライティング」は、業界ではかなり認知されていると思いますが、それと「CPI」というサービスに結び付くかどうかは別問題と?

そうですね。アクセスや、リンクが集まりドメインパワーを上げることが一番の目的としています。もちろんCPIサービスの認知拡大に繋がれば良いと思いますが、なかなかそこまでは結びついていません。

222書籍にもなった人気コンテンツの「沈黙のWebマーケティング」

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「沈黙のWebマーケティング」に続いて始まった「沈黙のWebライティング」

 

――「沈黙のWebマーケティング」「沈黙のWebライティング」「サーバネーター」と、ドメインパワーを上げるためのマンガコンテンツが現在3つありますが、どういうきっかけで始めたのでしょうか。

もともとは「レンタルサーバー」で検索した時に順位が下がってきていました。そこでマーケ担当が中心となり、ドメインパワーを上げるためのコンテンツ企画をやろうという話になりました。

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――実際やってみて、「レンタルサーバー」というキーワード検索に影響はありましたか?

多少上がっては来ましたが、ビッグワードなので、少し油断するとすぐ下がります。

サーバー知識のない人に向けたコンテンツ提供

――「CPI」はレンタルサーバー市場の中でどういう位置づけでコンテンツを配信しているのですか?

弊社のサービスはWeb制作会社、特にデザイン寄りの会社に認知度が高く、そこをターゲットとしています。ですので、そのようなターゲットのニーズに沿ったコンテンツを配信しています。また、Web制作会社を中心にしたイベントにも多数出ています。

――そのサービス自体にWeb制作会社に向けた特長があるのでしょうか?

サービス自体は、「サーバー知識のない人でも使えるサーバーの提供」をコンセプトにしています。ですので、開発者層にはあまりリーチ出来ていないプロダクトと言えますね。

――「沈黙のWebマーケティング」「沈黙のWebライティング」は、まさにそこにターゲティングされたコンテンツということですね。

そうですね。サーバー関連の情報だけでなく、Web制作全般に関わるコンテンツも必要だろうと。特にサーバーに詳しくないサイトオーナーや、Webディレクター、プロデューサーといった人たちに読んで頂けるような内容になっていると思います。

本当は「サーバーの選び方」といった実用的な情報の方がいいのかもしれませんが、同時にドメインパワーも高めなければならない。そのためには、流入を増やして、多くのリンクを張ってもらうのが第一になります。そういう意味では、ドメインパワーを上げるいいコンテンツになっていると思います。

集客とコンバージョンでコンテンツの目的は違う

――「CPI」はコンテンツがかなり細分化されています。どういう棲み分けで制作しているのでしょうか。

サーバー関連のコンテンツは、読んで頂いた人には「CPI」を知ってもらう。ここは単純にコンバージョンにつながっているコンテンツです。あとは「CPIスタッフブログ」があります。これは弊社のプロダクトがWeb制作者向けなので、そのターゲットに向けたお役立ち情報を配信し、弊社のことを知ってもらうのが狙いです。コンテンツを通じて弊社のことを好きになってもらえればという思いで書いています。

STAFFサーバー関連のお役立ち情報を軸とした「CPIスタッフブログ」

――実際やってみて、社外的・社内的な変化はありましたか?

「沈黙シリーズ」は、知っている方が多いので、「弊社が運営しています」と言うと、「そうなんですか!?」と驚かれる方もいるので、それをネタに話しやすいというのはあります。

――コンパージョン率などの指標はありますか?

コンバージョン率はコンテンツごとに出しており、統計の結果「CPIスタッフブログ」のコンバージョン率は、「沈黙シリーズ」より高いです。

――「CPI スタッフブログ」のコンバージョン率の高さは、何が理由だと考えられますか?

CPIスタッフブログ」は、読んでくれた人のためになるというのを前提に書いています。読んで、何か自分に役立つと思ってくれたら、書いている著者のことを信頼していただけると思います。

たまに自社のサーバー話もしますが、それも宣伝っぽくなく「ベンチマークの結果などを公開し、よかったら使ってください」のような感じで紹介します。そのように書くと、そこからのコンバージョンがあるので、直接ニーズのあるターゲットにリーチできているのではないかと思います。

――阿部さんは業界ではエバンジェリストとして知られますが、書く時は“阿部節”みたいなことは意識していますか?

出していきたい気持ちはありますが、文章でそれをやってしまうとあまり良くないと思っています。セミナーやイベントでは、結構自分のキャラを打ち出しますが、文章ではあまり自分を出していないです。

もちろん「CPI」には、私を知っている人も来られますが、基本は私やサービスを知らない人をターゲットにしています。知らない人に対してくだけた文章や、変わったことを書くと「不審」がられてしまいますから(笑)。

そこから会社のイメージが崩れるのも良くないので、一長一短だとは思うのですが文章ではそういうことはしていません。

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ファンの育成に欠かせない”オフ会”

――そうするとエバンジェリストとしては、オフラインでのユーザーとのコミュニケーションも重要になってきますね。

CPI」でLINE@をやっていますが、そこにお友達登録してくれた人に対して、「ありがとうキャンペーン」としてランチ会を実施しました。

弊社のプロダクトはすべてオンラインで販売しているので、ふだんはお客さんの顔が、見えません。しかしオフ会だとお客さんの顔が見える。「いつもありがとう」と直接伝えられる。率直な感想や意見が聞けるーー。これは大きなメリットですね。

そこで「CPIはどんなイメージですか?」と聞くと、たまに「CPIはよくわからないけど、阿部さんみたいなイメージ」と言われます(笑)。

――どんなイメージなんですか?

わからないです(笑)。おそらく軽い、カジュアルな感じというイメージだと思います。

――そういうオフ会は今後もやっていく予定でしょうか。

会社にとってユーザーとの接点はものすごく大事だと思うので、今後も続けていきたいと思っています。

記事を読んで頂いて、そこからコンバージョンしてもらうのももちろん重要ですが、ファンになってくれた人に弊社の宣伝をしていただく。と、いうことも重要な要素だと考えています。

ですのでファンを作るというのが、私の中での重要なミッションだと思っています。セミナーやイベントに登壇して記事を読んでもらい、弊社のことを好きになってもらうのを目標としてやっています。
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――ファンを作る上で心がけていることはありますか?

皆様のお役に立つ情報を提供できるかということを考えて行動しています。サーバーの相談をされた時など、要件次第では、他社のサーバーをお勧めすることもあります。特にWeb制作関係の情報は、聞きたいことが仕事の中で常に出てくるので。弊社のサーバーかどうかは関係なく、使える情報の提供を重視しています。

ーーまさにアドボカシーマーケティング【*】の考え方ですね。

そうですね。オンラインを主軸に販売をしているとユーザーが何を疑問に思われているかが、分かりません。オフ会だとそのような疑問も率直に出てきやすいと感じています。

――全体として、商品訴求、課題解決、バイラル喚起、オフ会でのコミュニケーションと、バランスよく目的別に収まっている感じがします。

稼働数でいうと、メルマガとコンテンツには注力しています。私個人でいうとイベント登壇が多く、6割〜7割くらいです。

エバンジェリストのエコサイクルの構築

――コンテンツを通じて、ユーザーとの信頼関係を築くという、まさにコンテンツマーケティングを体現してきたわけですね。

Web制作の人たちが活性化すると、Web制作においてサーバーは絶対必要になりますので、弊社の売り上げはもちろん上がりますよね。だからそういったところにつながれば良いと思っています。少し遠いかもしれませんが……

――ファンになってくれた人たちがエバンジェリストになっていったら説得力がありますからね。

それがファンですよね。ファンの方が他の制作会社にオススメしてくれると、弊社のプロダクトの利用も増えますので、ありがたいです。

――今後、阿部さんご自身で展開していきたいと考えていることはありますか?

これまで5年近くWeb制作者に向けた情報発信をやってきたので、そこに対しては多少認知が広がっているとは思っています。ただWebから離れると、KDDIウェブコミュニケーションズという会社名を聞いたことない人は、まだかなり多いと思います。

ですので、弊社の認知度を上げるためには、そういったWeb以外のところにも何か認知が広げられるようにできたらいいなと思っています。Webという枠を少し超えて、認知を拡大できるようにと、常に考えています。

今は「CPI」というブランディングありきで、そこが軸になっていると思いますが、母体の会社そのもののブランディングもめざしていきたいと考えています。

ファンの囲い込みという意味では、やはりオフ会をやっていきたいです。記事を読んでいいなと思ってもらっても、なかなか好きにはなっていただけないので、オフ会を通じて、好きになってもらうっていうことにつながればと思っています。

ブログとオフラインの両軸の活動、イベントも含めた活動などが全部回って初めて、プロダクトの購入にコンバージョンしていくと思っています。だから、どれが欠けてもダメだと思います。

――最後に、コンテンツマーケティングを進める上で、阿部さんが信条にしていることがあればお教えください。

自分の好きなことを書くということだと思います。私はブログを書くのが好きなので、調べたことを書き、「いいね」と言ってもらえると、それが一番うれしいです。その好きなことを通じて、皆さんのお役に立てれば、最高です。

 

【*】アドボカシーマーケティング

「アドボカシー」とは、「支援」「擁護」「代弁」などの意味。顧客との信頼関係を築くために、徹底的に顧客本位で接すること。一時的に不利益になっても、長期的には利益につながるという考えのマーケティング手法。

「愛のないコンテンツマーケティングに未来はない」連載一覧 Vol.1スペースを通じて「新しい体験を売る」~”活用事例集”としてのオウンドメディア「BEYOND」
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Vol.4「決定者が多いと、つまらないものしかできない」BAKE阿座上さん・塩谷さんに聞くオウンドメディア成功の秘訣
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Vol.9“店長ブログ”がCVに効く!「NOMOOO」「KURAND」が見つけた実店舗とオウンドメディアの連携
Vol.10”あの読者”に届けたい。楽天「それどこ」が実践した伝わるコンテンツの作り方
Vol.11 ファンを育成する「課題解決・バイラル・オフ会」の三位一体 ~ CPI・阿部正幸さんに聞くコンテンツマーケティング戦略

Editor's EYE

阿部正幸さんが2012年に「CPIスタッフブログ」を立ち上げる時、社内では賛同を得られなかったという。「そんなの意味ないだろう」や、「どうせブログなんて続かないから辞めな」など、言われたという。しかし「書きたいという気持ちや、今これが必要」と主張し、CMSや、ライティングを自分で行い、「CPI スタッフブログ」を運営してきた。

私はメディアを運営するには、オウンドメディアである前に「オレメディア」であるべきだと考えている。もちろんコンテンツマーケティング施策を進める時にはKGIKPIからペルソナ設定、ユーザーの行動分析、アクセス分析のプロセスは必要である。しかし、メディアはすべてを優先して「これを伝えたい」「ユーザーとつながりたい」というWeb担当者個人の強い思いがないと続かないし、愛されることもないーー。阿部さんのファン育成にかける強い思いを聞いて、改めて「オレの情熱」の大切を実感した。

取材・文:成田幸久(ナイル株式会社/コンテンツディレクター)

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著者紹介

成田 幸久(なりた ゆきひさ)
成田 幸久(なりた ゆきひさ) コンテンツディレクター(コンテンツマーケティング戦略支援・制作支援)

AMEX会員誌『IMPRESSION』、『ワイアード』日本版、JAL機内誌「winds」などで副編集長を務めた後、眞鍋かをりなどの著名人ブログをプロデュース。ほか『ギズモード・ジャパン』創刊ディレクター、セブンイレブンとヤフーの共同事業メディア『月刊4B』編集長、オウンドメディアのアドバイザリー支援など、Webメディアの企画・運用など実績多数。著書に『愛されるWebコンテンツの作り方 』がある。

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